マルタ留学経験を持つ異色の地方局の看板アナが、退路を断って俳優を目指した理由

TBS系列のTBC東北放送を退社し、俳優に転身した元アナウンサーの小笠原遥(32)が、中村ゆりか主演のテレビ東京「部長と社畜の恋はもどかしい」(Paraviで独占配信中)で初のレギュラー出演中だ。朝の帯番組のMCも務めた看板アナは、なぜ魅力的な職を捨て、挑戦する道を選んだのか。

俳優に転身した元アナウンサーの小笠原遥【写真:荒川祐史】
俳優に転身した元アナウンサーの小笠原遥【写真:荒川祐史】

小笠原遥インタビュー ドラマ「部長と社畜の恋はもどかしい」で初のレギュラー出演中

 TBS系列のTBC東北放送を退社し、俳優に転身した元アナウンサーの小笠原遥(32)が、中村ゆりか主演のテレビ東京「部長と社畜の恋はもどかしい」(Paraviで独占配信中)で初のレギュラー出演中だ。朝の帯番組のMCも務めた看板アナは、なぜ魅力的な職を捨て、挑戦する道を選んだのか。(取材・文=平辻哲也)

 同ドラマは残業ばかりの社畜女子・まるちゃん(中村ゆりか)と定時退社の部長・堤司(竹財輝之助)のムズキュン・オフィスラブコメ。同僚の佐々木良平役を演じる小笠原は第6話(2月9日放送)から出番も増え、その行動がまるちゃんを窮地に追い込み、堤司部長との大切な時間を奪ってしまう……という役どころだ。

「そのシーンの撮影が終わってから、現場で何かハプニングがあるという『佐々木!』と言われるようになりましたね(笑)。(共演の)佐野岳さんがすごくいじってくださって、和気あいあいで楽しかったです。初めてクランクインからクランクアップまで通して経験することができ、自分の大切な作品になりました。もともと会社員だったので、会社での所作、せりふは自分なりにイメージして臨めたのもありがたかったです」

 小笠原は早稲田大学商学部卒業後の2014年10月に東北放送にアナウンサーとして入社。1年目から朝の情報番組「ウォッチン!みやぎ」のメインMCを務めるなど活躍していたが、2018年12月に退社。現在は俳優業をしながら、ウェブメディアでライターとして“二刀流”の活動を続けている。

「局アナ時代から、竹野内豊さん、阿部寛さん、広瀬すずさんなど第一線で活躍する方々にインタビューしたり、タレントさんとロケをご一緒したこともありました。今はウェブ向けのインタビュー記事を通じてですが、一流の方の話を伺うことは私自身、1人の役者としても演技に活かせる部分があるので、ありがたいです」と話す。

 アナウンサーは就職戦線でも屈指の高倍率の職種で狭き門。なぜ転身を決めたのか。

「ドラマ、映画が好きで、小学生の頃から純粋にあの中の世界に入りたいという気持ちがありました。その後、帝国劇場でグランドミュージカルと出会って、市村正親さんが出演する『ミス・サイゴン』や『モーツァルト!』での井上芳雄さんを見て、自分もあの舞台に立ってみたいとレッスンを受けていましたが、一方で、大学に進学させてくれて、留学も経験させてくれた両親への感謝も大きかった。夢を追うよりも、社会人として働く姿を見てもらって恩返しがしたいという思いもあったんです。それに当時は自分が役者として成功するイメージも具体的に持てなかったし、正直、その自信もなかったですから」

 転機になったのは、2018年1月、阿部寛主演の映画「祈りの幕が下りる時」に出演したことだった。「宮城ロケがあったので、アナウンサー役かなと思っていたら、市場の魚屋役だったので驚きました。撮影当日、現場での俳優陣やスタッフさんが作る独特の空気感に言葉では説明のつかないような心ときめく瞬間がありました。あの日は家に帰ってからもしばらく、自分が一度心の中にしまったはずの感情があふれ出ていました」。

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