攻玉社中で算数1科目の特別選抜入試実施 東大、早慶の合格常連校に40年間で変貌
新興の進学校として知られる私立男子中高一貫校の攻玉社中学校(東京・西五反田)で5日、特別選抜の入試が行われた。試験科目は算数のみで、受験生(応募者158人)は午前8時40分から算数I(50分、50点)、同9時45分から算数II(60分、100点)の試験に挑んだ。
算数1科目入試は増加傾向、大学入試にも好影響
新興の進学校として知られる私立男子中高一貫校の攻玉社中学校(東京・西五反田)で5日、特別選抜の入試が行われた。試験科目は算数のみで、受験生(応募者158人)は午前8時40分から算数I(50分、50点)、同9時45分から算数II(60分、100点)の試験に挑んだ。
同校はすでに2月1日に第1回(募集人員100人、応募者396人)、2日に第2回(同80人、同590人)の入試を国語・算数・社会・理科の4科目で実施しているが、この日の特別選抜(同20人)は算数1科目。算数が得意な生徒を集めたいという学校側の姿勢が垣間見える。大手進学塾の四谷大塚が昨年末に公表した「80偏差値」(合格率80%に必要な偏差値)によると、攻玉社中の第1回偏差値は56、第2回は61、特別選抜は63と次第に高くなっていく。
算数1科目で入試を行う私立中は近年増加傾向にある。算数1科目なら受験生の勉強の負担が軽減されるように見えるが、「算数が得意な生徒がこぞって受けに来るわけですから合格基準点が上がり、従って難易度も高くなります。算数が得意な生徒を受け入れると数学オリンピックなどの外部大会で学校の知名度を上げることができますし、他の生徒の意欲が高まるなど学校に良い影響を与えます。算数ができる生徒は大学受験でもそれなりの成績を残しているという学校側の分析も出ています」(大手進学校講師)
同校公式ホームページによると、攻玉社の創立は文久3年(1863年)。数学・オランダ語・航海術などを教授する蘭学塾「攻玉塾」が起源で、創立当初は理数系の塾として福沢諭吉の慶應義塾、中村正直の同人社とともに東京の3大義塾の1つに数えられた。「攻玉」とは、詩経の「他山の石以て玉を攻(みが)くべし」を元としている。創設者の近藤真琴は福沢諭吉、新島襄、中村正直らと並び明治6大教育者の1人とされる。幕末の動乱期にいち早く時勢を見抜いてオランダ語を学び、西洋近代の学問や技術に熟達。日本で最初のかな書き辞書「ことばのその」や翻訳SF小説の第1号「新未来記」は近藤の手によるもの、という。いち早く数学の重要性を悟った創設者の意志が算数1科目入試の実施にもつながっているようだ。
21年の大学現役合格実績を見ると、国公立は東京大15人、京都大2人、東京工業大7人、一橋大2人、横浜国立大7人、東京都立大3人。難関私大でも慶大98人、早稲田大107人、上智大47人、東京理科大64人と目覚ましい成績を残している。GMARCHでは明治大96人、立教大17人、中央大44人、青山学院大34人、法政大22人となっており、こちらは早慶受験組のすべり止めになっていることがうかがえる。
同校を40年ほど前に卒業した自営業のOBは「早慶に100人規模の合格者を出しているなんてビックリです。私が通っていた頃は毎年東大に1人入るかどうかでした。中学は3クラスあってうち1クラスが進学に力を入れる特別クラスで有名大学の合格実績もそこそこに残していたと記憶しています。そのほかの勉強は並程度でクラスの半分は髪型をパンチパーマにしていました。変われば変わるもんですね」。
かつては見た目“ヤンキー”だった私立学校が、いまや難関校の一角を占める有名進学校に変貌した。学校側の努力は並大抵ではなかったに違いない。東急目黒線不動前駅から徒歩わずか1分という好立地。重いカバンを持った生徒にとって負担が少ないところも保護者にとってはうれしいポイントだ。