一人芝居の第一人者イッセー尾形、一人のアフレコは「勝手が違う。汗をかきながらやった」

劇場版「DEEMO サクラノオト ―あなたの奏でた音が、今も響く―」【写真:(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会】
劇場版「DEEMO サクラノオト ―あなたの奏でた音が、今も響く―」【写真:(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会】

米アカデミー会員「いつもDVDで送ってくるけど、今回は全部パソコンで観てます」

 2月22日には70歳という節目を迎える。「お祝いというのは考えていないけど、今の楽しみは、小澤征爾音楽塾『こうもり』に出ること。オペラなんですけども、一人だけ歌わない看守のフロッシュという役で出るんです。以前にも、出させていただいたんですけども、それが初めてのオペラで、朗々と歌う姿に鳥肌が立ちまくったのを覚えています。歌っている言葉や意味は全然分からないんですけども、それでも圧倒されるものもある。あの感激がもう一度味わえるんだ、と。劇場版『DEEMO サクラノオト』もそうですが、声だけで感情を塗り込められるのはすごい。声優の仕事もあれば、またチャレンジしたい。今はその入り口にいるんだなと思っています」。

 尾形は日本人では数少ない米アカデミー会員。投票にも積極的に参加している。「いつもね、DVDで送ってくるんですけども、今回は全部パソコンで観ていますね。多分、30~40本ぐらいあったかな」。

 オススメを聞くと、「アダム・ドライバー」と即答。「沈黙」で神父役を演じたドライバーの後にも注目しているのだという。

「今年も3本、有力作(『アネット』『最後の決闘裁判』『ハウス・オブ・グッチ』)に出ているんです。(レオス・カラックス監督のミュージカル)『アネット』では歌っていますが、うまいですね。それから、ニコール・キッドマン。『愛すべき夫婦の秘密』(Amazon Prime Videoで配信中)では、往年の人気テレビドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』の主人公を演じたルシル・ボールを演じているんですけども、外見もハスキーな声もコピーしているんです。原語で見るのもあるので、会話劇だと意味が分からないものもある。でも、どういうシチュエーションなんだろうと思って、読み取ろうと気持ちも強くなる。意味だけに頼っている映画はダメだなとも分かったり、気付きもある。それにしても、みんな、コロナに負けずに頑張って作っているよな。それは勇気もらったなあ」

 第94回アカデミー賞は2月8日(現地時間)、ノミネーション発表、3月27日に開催予定。尾形の注目作が受賞なるか。こちらも注目だ。

□イッセー尾形(いっせー・おがた)1952年2月22日、福岡県生まれ。「一人芝居」の第一人者として独自のスタイルを80年代に確立。90年代には国内のみならず、海外からも招待され、NY、ベルリン、ミュンヘン他、数多くの都市で上演を果たす。2005年にはロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」で昭和天皇役を好演。17年に出演したマーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙―サイレンス―」では第42回LA映画批評家協会賞助演男優賞の次点に選ばれるという快挙を果たす。21年シェークスピアカバーの短編小説集「イッセー・シェークスピア」刊行。

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