一人芝居の第一人者イッセー尾形、一人のアフレコは「勝手が違う。汗をかきながらやった」

今年2月に70歳を迎えるイッセー尾形は、シニア俳優の星というべき存在だ。一人芝居で確固たる位置を確立し、海外の映画でも引っ張りだこ。劇場版「DEEMO サクラノオト ―あなたの奏でた音が、今も響く―」(2月25日公開)では、くるみ割り人形という人間ではない役に初挑戦。米アカデミー会員でもある尾形が本作への思い、今年のオスカーの注目作も語ってくれた。

一人芝居の第一人者であるイッセー尾形【写真:ENCOUNT編集部】
一人芝居の第一人者であるイッセー尾形【写真:ENCOUNT編集部】

劇場版「DEEMO サクラノオト」でくるみ割り人形役、声優業は3回目の挑戦

 今年2月に70歳を迎えるイッセー尾形は、シニア俳優の星というべき存在だ。一人芝居で確固たる位置を確立し、海外の映画でも引っ張りだこ。劇場版「DEEMO サクラノオト ―あなたの奏でた音が、今も響く―」(2月25日公開)では、くるみ割り人形という人間ではない役に初挑戦。米アカデミー会員でもある尾形が本作への思い、今年のオスカーの注目作も語ってくれた。(取材・文=平辻哲也)

 フリーになって今年で10年。その間、マーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の小説を映画化した「沈黙―サイレンス―」(2016年)ではキリシタンを弾圧する長崎奉行・井上筑後守を演じ、世界で高く評価された。昨年も、フランスのアルチュール・アラリ監督が、日本軍帰還兵・小野田寛郎の半生を描いた「ONODA」での上官役が印象深い。

「フリーになると、全部、自分が世界と向き合うということ。これは楽しいね。責任だったり、仕事の喜びだったり、悔しさだったりあるけど、それも全部自分のことだから。個人商店ですから、明日できることを精いっぱいやっていこうという感じですね」

 最新作の劇場版「DEEMO サクラノオト」は、世界中で人気の音楽ゲーム「DEEMO」の世界観を映画化したもの。記憶を失った少女が、ピアノを奏でる謎の存在Deemoと出会い、音楽を通じて、自分自身を取り戻していくファンタジー。尾形は少女を見守る「くるみ割り」という人形を演じた。

「普段、アニメは見ないし、元々のゲームも知らなかったけども、僕ら高齢者が観ても面白い作品なんですよ。自分に引きつけてみると、少女の話だけじゃなくて、人生の話でもある。少女が自分自身を取り戻すという話なんですが、一人だけの孤独な戦いではなくて、取り戻すために手を貸してくれる人がいっぱいいるということなんです」

 声優業は3回目の挑戦。くるみ割りは、「ごじゃる」という語尾がかわいらしく、ラップのように韻を踏むシーンもある。「言ってみれば、“にぎやかし”みたいな存在なんですけども、こういうキャラクターは初めて。難しくもあったし、面白かった」。

 アフレコは一人で収録した。一人芝居の第一人者だが、「いや、声だけというのはちょっと勝手が違うんですよ。一人芝居は、お客さんが体まで見てくれる。それはちょっと寂しかったし、ちょっと自由になりきれない。アフレコでは画は未完成だったけれども、僕らの仕事は精いっぱい声を吹き込むことと思って、汗をかきながらやりました。出来上がったのを見たら、ちゃんと掛け合いになっていた。今のアニメはすごいですね。動きがなめらか。でも、くるみ割りはカクカクと動いていましたけども。孫にもぜひすすめたいね」と笑う。

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