藤井 風は“日本ポップスの完成形” 紅白で大注目、幅広い層に支持される理由とは?
藤井 風「きらり」を分析、リスナーに「希望」を伝える1曲
今回は車のCMソングとしてもよく耳にする「きらり」を取り上げてみたい。この曲の歌詞は「希望」という言葉を使わずしてリスナーに「希望」を伝えてくれるものだ。
「荒れ狂う季節の中も~君とならば さらり さらり」「新しい日々も つたない過去もすべてがきらり」……まるで俳句でも読んでいるような美しい日本語がメロディーに乗った「音」としても最高に気持ちがいいのだ。
楽曲の基本的な構造は、ソウルミュージックやシティーポップなどをルーツとした「リフもの」と呼ばれる8小節の繰り返しで、洋楽的な作りになっている。しかし、藤井の作るメロディーには絶妙に「歌謡成分」が入っていて、これが彼の音楽が幅広い層に支持される最大の魅力になっている。
決しておしゃれすぎたり、カッコ良すぎたりしない歌謡的な親しみやすさを含みながらも、かつ洋楽的にイメージは連なりビートは続く。まるで藤井が運転する車の助手席に乗っているようにリスナーは安心してそのグルーヴに身を委ねる。
ファーストアルバム「HELP EVER HURT NEVER」は、そんな絶妙なバランスの素晴らしい楽曲が詰め込まれた名盤であるが、その後にリリースされた洋楽的な「きらり」が代表作になったことが非常に画期的なことであり、その意味は大きい。
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藤井 風は私たちの人生を肯定してくれる