政治家の94%がハラスメントを経験 一般企業の約3倍、有権者からのモラハラも
政治家のメンタルケアや政党・議会・自治体向けのハラスメント研修コンテンツを提供する一般社団法人ポリライオンと、政策実現ができる女性議員を増やすことをミッションとする超党派の若手女性議員のネットワーク「WOMANSHIFT」が共同で、200人の議員を対象にハラスメントの現状調査を実施。政治家へのハラスメント対策の第一歩として、結果を「政治家ハラスメント白書」にまとめている。
多様な人材が政治の世界に挑戦するうえでの大きなハードルに
政治家のメンタルケアや政党・議会・自治体向けのハラスメント研修コンテンツを提供する一般社団法人ポリライオンと、政策実現ができる女性議員を増やすことをミッションとする超党派の若手女性議員のネットワーク「WOMANSHIFT」が共同で、200人の議員を対象にハラスメントの現状調査を実施。政治家へのハラスメント対策の第一歩として、結果を「政治家ハラスメント白書」にまとめている。
国会議員と地方議員の議席のうち8割以上を男性が占めており、政治分野への女性進出が先進国の中で最も遅れている日本。こうした状況の中で、政治家へのハラスメントが女性をはじめとした多様な人材が政治の世界に挑戦するうえで避けられない課題となっている。現状では政治家がハラスメントの被害に遭っても対応できる政党や議会は限られており、ハラスメントの被害は本人の資質に問題があるとして取り上げられないことも珍しくない。
今回の調査は政治家へのハラスメントの現状を調査し、政治家をとりまくハラスメントの現状を広く周知・啓発、政治分野のハラスメント対策の一助とすることを目的に、2021年8月11日~10月9日の期間、全国の国会議員・地方議員200人を対象に実施。その結果、全政治家の94%がハラスメントを経験しており、男女別でも男性政治家は90%、女性政治家は98%と、一般企業の32%と比較すると極めて高い数値であることが分かった。
同じ議会に所属する同僚議員からのハラスメントでは、男女差が顕著に表れた。ハラスメント経験を「何度もある」と回答する女性政治家の割合は全体の半数に達しており、議会の中では特に女性がハラスメント被害に遭いやすいことがうかがえる。
行政職員からのハラスメントは全政治家の63%が経験。8%の政治家は「何度もある」と回答しており、26%が年に1回以上のハラスメント被害に遭遇している。特に新人議員や当選期数の浅い議員と執行部などのベテラン行政職員では、知識や経験に差があるため、ハラスメントが発生する構造になりやすいと推測される。
ハラスメントを受けた時期では、約8割が「現職の任期中」と回答。これは有権者からのハラスメントに加えて同僚議員からのハラスメントにも遭うことが原因と推測できる。続いて「新人の政治活動期間中」が44%となっており、初めて選挙に立候補する前の政治活動期間中もハラスメントに遭うリスクが高いといえる。
ハラスメントの内容では、全体ではパワー・ハラスメント(パワハラ)が最多に。有権者からのモラル・ハラスメント(以下モラハラ)の割合も高く、同僚議員からのハラスメントではセクシュアル・ハラスメント(以下セクハラ)やマタニティー・ハラスメント(以下マタハラ)といった、性に関するハラスメントの割合が高くなっている。男女別では、男性政治家が有権者から受けるハラスメントの内容はパワハラが大半であり、「票」や「当選・落選」を条件とした要求が最も多かった一方、女性政治家へはモラハラが多いことが分かった。
ハラスメントを受けた場合の対応については、「何もしない」という回答が最も多く、約半数に達した。続く回答は「家族・友人等信頼できる人に相談する」であり、ハラスメントを受けても自分が受け入れるか、身近な人に相談するなど、限られた対処法しか選択肢がないのが現状のようだ。家族に対するハラスメントについては、「受けたことはない」が59.2%だった一方、残りの40.8%は家族もハラスメントの被害に遭っているという計算になる。職業を理由に家族がハラスメントの被害を受けるというのは他の職業ではあまり考えられず、政治分野に多様な人材が参画する大きなハードルとなっている。