桝太一アナ、研究者転身「サイエンスコミュニケーション」って何? 協会会長に聞いた
日本で唯一の全国組織として約370人の会員を持つ
科学史や進化生物学分野のサイエンスライターだった渡辺会長は、文部科学省の研究所に入所したのをきっかけに、学校や科学館などで活動する仲間と勉強会やシンポジウムを立ち上げ、「ネットワーク作りが必要」ということで、11年に同協会の設立に参加した。日本では科学の普及は、ボランティア活動が支えてきた面が大きいというが、「横の連絡がないのがネック」。有志で始めた活動は、現在では日本で唯一の全国組織として、約370人の会員を持つ規模に。学芸員や学校の先生、大学教員や一般ボランティアなど幅広い。
社会全体で科学に対するリテラシーを高めるために、日本では「サイエンスカフェ」の取り組みが人気だ。「講演会よりもくだけた雰囲気」で、時には喫茶店や公共スペースで、車座になって語り合う。多様な個人や団体が広く全国的に実施。全国で年間1000回開催していた時期もあったが、コロナ禍によって現在はオンラインに移行している現状があるという。
実は、サイエンスコミュニケーションは世界を見てもまだ学会はなく、駆け出しの分野でもある。「協会の活動を通して、1人でも多くの人に科学を自分のこととして考えてもらい、科学に関心を持ってもらえれば。今後も会員同士で、より効果的な成果を持ち寄り、共有して、理念の浸透に努めていきたいです」と、渡辺会長は前を見据える。
そんな中での桝アナの“加入”は何よりの朗報という。同協会の協会誌最新号で、桝アナに寄稿してもらった縁もあるといい、喜びはひとしお。「いろいろなバックグラウンドを持つ人たちが参加することでサイエンスコミュニケーションの多様性が増します。物事を的確に伝えるしゃべりのプロの桝さんに参入していただくのは、すごくうれしい。心強いです」と大歓迎だ。
渡辺会長は桝アナとまだ面識はないが、実はつながりがあるという。渡辺会長は同志社大特別客員教授として、同志社大生命医科学部のサイエンスコミュニケーター養成副専攻を担当しており、学生たちがサイエンスコミュニケーションを学ぶ機会を設けているという。桝アナは、同志社大ハリス理化学研究所の専任研究所員(助教)として活動を始める予定で、同志社大の“研究者同士”になるのだ。渡辺会長は「もしよければ、これからどんどんコラボレーションをしたいですし、一緒に研究ができればと思っています」。桝アナに“ラブコール”を送った。
□渡辺政隆(わたなべ・まさたか)、日本サイエンスコミュニケーション協会会長、同志社大特別客員教授。専門はサイエンスコミュニケーション、科学史、進化生物学。大学院在学時から一般読者向けの科学記事の執筆・翻訳に従事。文部科学省科学技術・学術政策研究所、科学技術振興機構、筑波大などを経て現職。著書に「一粒の柿の種-科学と文化を語る」(岩波現代文庫)、「ダ―ウィンの遺産-進化学者の系譜」(岩波現代全書)など。訳書に「種の起源」上下巻(ダーウィン著、光文社古典新訳文庫)など多数。