■村山彩希（AKB48）　審査員特別賞
・決勝大会進出：初
・1曲目／oath sign（LiSA）

　村山さんは、自分で自分の歌声を認めていないところがあります。でも、僕はトランペット吹きなので、すごい速度感で綺麗に抜けるあの高音が憧れなんです。ゴスペラーズの黒沢（薫）さんが「ギフト」と表現されていましたが、まさにそのとおりだと思います。

　リハーサルのときよりも本番で上げてきた数少ないメンバーで、お客さんがいる状況でステージに立った瞬間の輝き、ファンのみなさんの応援を自分のエネルギーに変えられる力を持っている。エンターテイナーとしてのスター性を感じました。

　正直に言えば、音楽的な仕上げ方はまだ経験不足なところがあります。ただ、曲の練習はすごくしていて、さすがのプロ意識を感じました。岡田（奈々）さんとずっと一緒に歌っていれば、あれだけうまくなるのも当然かもしれません（笑）。ファイナル進出はならなかったですが、高得点も取っていたし、おそらく彼女の高音域は審査員のみなさんの心に残ったはずです。

　村山さんが得意のダンスに加えて、歌もさらに磨いていくことで、正真正銘の「シアターの女神」になるための第一歩になったらいいなと思います。矢野（帆夏）さんや山崎（亜美瑠）さんのように、“歌唱力ガチ勢”の道にぜひいらっしゃいという感じです（笑）。

■李始燕（NMB48）
・決勝大会進出：初
・1曲目／ブルーバード（いきものがかり）

　声の質と圧がすごくて、密度の高い音色が出せるので、予選のときに衝撃を受けました。ただ、まだグループに加入して間もない影響で経験不足は否めなくて、決勝大会のステージで力を出し切れなかったのは事実です。曲を仕上げるスキルもまだ足りないところはありますが、そこがクリアになれば優勝もあり得るくらいポテンシャルを秘めている気がします。

　李始燕さんは、アイドルとしてもチャーミングで、すごく魅力的です。もともと48グループの大ファンで、舞台裏でメンバーたちに会えることにテンションが上がっていました。偶然、会場に来ていた（元SKE48の）高柳明音さんと目を輝かせて写真を撮っていましたね（笑）。今後のNMB48を背負って立つ逸材になるかもと感じさせる存在です。

（7.5期生の）李始燕さんと事実上の同期にあたるNMB48の7期生には、歌の資質が高いメンバーがたくさんいます。1年後、今のSTU48のように躍進する可能性はあるので、李始燕さんが決勝大会で感じたものを持ち帰って、グループが活性化したら楽しみです。

■矢野帆夏（STU48）　第1組1位通過／最終結果：3位
・決勝大会進出：4大会連続4回目（第2回は怪我で欠場）
・1曲目／青春の影（チューリップ）
・2曲目／逢いたくていま（MISIA）

　矢野さんは今大会で、確実に過去の自分を超えていました。これまでの細かい課題を全部クリアしていたし、「どれだけ歌ったらこれだけ実力を上げられるのか」と思いました。常連メンバーの中では、一番のレベルアップだったと言っても過言ではないはずです。

　今までは綺麗な音色で、真っすぐにピュアに歌うことが強みだったなかで、新たに感情とかエモーショナルさも駆使した歌唱をしていて驚きました。大舞台に緊張はつきものですが、矢野さんの場合は歌える喜びと幸せがそれに勝っていて、歌い手として次のステージに上った瞬間を見た気がします。

　2曲目の「逢いたくていま」で全部のバンドの音が消えて、「今 逢いたい～」とボーカルだけ入る部分で、持ち前のピュアさはそのままに、“別の魅力”として感情をむき出しにしてガッと行って会場を取り込んで、あの難曲を歌いこなしました。

　忘れてはいけないのは、矢野さんはMISIAさんよりも高いキーで歌っているということ。しかも、彼女のほうからリクエストがありました。最初は「矢野さんぽくない曲だし、さらにキーを上げて大丈夫なのかな」とバンドメンバーと心配していたんです。でも、リハーサルで聞いて、「なるほど、これで勝ちに来たのか」と。MISIAさんの上の音域で、音色を響かせたのにはもう脱帽です。

　今回は優勝に限りなく近い3位。第1回と今回の歌を聞けば、別人かと感じるくらいレベルアップしているし、何回も聞きたくなる歌を歌うメンバーなので、もう“優勝しか見ちゃいけない”と思います。