直木賞・今村翔吾氏「号泣してしまいました」 人力車で会場入り、元ダンスの先生

第166回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)が19日発表され、直木賞を受賞した今村翔吾氏(37)が都内のホテルで記者会見に出席した。3回目の候補入りで、受賞作は「塞王の楯」(集英社)。

第166回直木賞を受賞した今村翔吾氏【写真:ENCOUNT編集部】
第166回直木賞を受賞した今村翔吾氏【写真:ENCOUNT編集部】

直木賞はダブル受賞でもう1人の受賞者は米澤穂信氏

 第166回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)が19日発表され、直木賞を受賞した今村翔吾氏(37)が都内のホテルで記者会見に出席した。3回目の候補入りで、受賞作は「塞王の楯」(集英社)。

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 今村氏は1984年、京都府木津川市生まれ。2017年に文庫書下ろし「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」でデビュー。18年、「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞(刊行時に「童の神」と改題)した。

 会見で、開口一番、「まさか自分が泣くとは思っていませんでしたが、号泣してしまいました」と万感の思いを語った。「野球少年がイチロー選手みたいに首位打者、ゴールデングラブ賞を取りたいみたいな、純粋な(思い)。僕は池波正太郎先生の本から始まって、本当に憧れの賞だったんです」と、夢をかなえた実感を口にした。

 デビューして5年目の遅咲きの小説家。「僕は30歳まで一切小説を書いたことのない人間で、30歳で初めて筆をとって、もともとダンスの先生で、子どもたちに30歳になってからでも夢はかなうということを言って(小説家を)目指したので、『うそをまこと』に変えることができました。子どもたちの思いを裏切らずに済んだ。そういう気持ちが入り混じって泣けてきましたね」と語った。

 来月から出版ラッシュというが、「1回、時間をたっぷりかけて、心いくまで1つの作品に臨んでいきたい思いもありますが、慣れちゃったのでこの生活に」。今後については「直木賞は夢で素晴らしい賞ですが、明日になったらもう過去になるので、よりよい作品を、自分の生き方として新しい目標を常に持っていきたいです」と強調した。

 なんと会場まで、人力車で来たという。「文学賞はお祭りやと思っています。普段興味ない方でも、切り口ならなんであっても僕の大好きな直木賞を知っていただけるように。盛り上げたかった。何かのきっかけになればいいな」と話した。

 記者から全国の本屋にメッセージを聞かれると、「めっちゃいいパスくれるね」といい、会場を笑わせた。「当初は47都道府県回らないと帰らないという企画(を考えていて)、車も買っていました。昨今の(新型コロナウイルス禍の)情勢を考えて今じゃないな、と。僕は書店も経営していて、きれいごとじゃなく、なんかできることないかと考えています。自分の持ち出しで、車で一気に回って3か月かかる計算ですが、書店さんを応援する計画をしています。もう少しこういう状況を乗り越えていって、楽しいこと明るいことをできたらいいですね。僕はこの約束を守りますので、書店・学校など、『翔吾来てくれ』でいいので呼んでください。もちろんボランティアでいきます」と、次なる夢を明かした。

 直木賞はダブル受賞で、もう1人の受賞者は米澤穂信氏(43)で「黒牢城」(KADOKAWA)。芥川賞は砂川文次氏(31)の「ブラックボックス」(群像八月号)に決まった。

 正賞は時計、副賞は賞金100万円。贈呈式は2月下旬に都内で行われる。

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