オミクロン軽視は禁物 コロナ診療の最前線に立つ感染症専門医からの緊急提言
今後第6波により想定される展開は? 考えられる“3つのシナリオ”
――感染拡大を受け、濃厚接触者の待機期間を10日程度に引き下げる案や、濃厚接触者となった医療従事者を毎日の抗原検査で出勤させる案も出ている。
「濃厚接触者の待機期間引き下げについては賛成です。ここまで感染者が増えると医療従事者の不足によって病床が空いていても医療提供ができなくなります。また社会機能の停止も起きてきますから。一方で医療従事者の毎日の抗原検査については現実的に現場ではなかなか難しいのではないかと思います。濃厚接触者の数によっては検査を取る側の業務負担になり、とられる側も苦痛です。現場の意見を聞いて決めたことなのか疑問を感じざるを得ない。米国CDC(疾病予防管理センター)の推奨のように3回目のブースター接種を条件に濃厚接触者となっても勤務継続を可能とするなど、抗原検査よりもまずは3回目接種を進めるべきです」
――岸田首相は指定感染症法上の区分について、現在の「2類相当」からインフルエンザと同じ「5類」への引き下げに現時点では否定的な考えを示した。
「これはまったくの正論で、法的位置付けを引き下げたところで今と状況はあまり変わらないと思います。現在コロナ患者を見ていない病院は、法的に見られないのでなく見るだけの設備、能力がないところ。2類相当から5類にすれば街のクリニックで診察できてすべての問題が解決するという人がいますが、それはコロナをただの風邪だと思って実際に患者を診ていない人の意見。将来的には引き下げるとしても、未知の変異株が流行している今ではない。オミクロンによる第6波を医療ひっ迫を起こさず乗り切って、新しい変異株が出ないようならそのときにはじめて検討できること」
――今後第6波により想定される展開は。
「考えられるシナリオは3つあります。1つはこのまま感染者が急増しても、ワクチンによる重症化予防効果が高く医療ひっ迫が起きないパターン。2つ目は爆発的な感染力による数の暴力で、第5波の数倍の感染者が出て重症者も増えてしまい医療崩壊が起こる最悪のシナリオ。そして3つ目は、私はこれが一番可能性が高いと思いますが、重症者は増えずとも院内クラスターが多発して医療従事者の欠勤が急増、コロナ医療はひっ迫しなくても他の病気や事故の患者の受け入れができなくなり、別の医療ひっ迫が起きるという展開です。これを避けるためには医療従事者や高齢者などへの3回目接種を早く進めることと、それが終わるまで感染拡大を食い止めるしかありません」
――なぜ第6波が来るまでに準備をしていなかったのかという声もある。
「コロナ禍以前の病院の通常の診療に使用する病床の使用率って、どれくらいだと思いますか? おそらく半分以下だと思っている人がほとんどではないでしょうか。実はコロナ禍前ですら8~9割のベッドは埋まっている状況です。つまり日本の医療従事者はコロナ以外の医療で既にあまりゆとりのない勤務で仕事をしていました。要は慢性的な人手不足。ここでコロナ医療の負荷がかかり、加えて院内クラスターが発生すれば容易に医療はひっ迫してしまいます。それを避けるために、我々もできる限りのことをしていきます」
※この記事は当初、1月13日に掲載したものです。しかし、岡教授の意図とは異なる内容であったため、一度取り下げました。岡教授、関係者、読者のみなさまに大変ご迷惑をおかけしました。岡教授に確認を取った上で内容を修正し、再掲載致します。