伊東蒼に芽生えた自覚「周囲引っ張る演技を」 16歳で芸歴10年、天才子役から演技派へ
6歳のときからキャリアをスタートさせ、高校1年生。映画出演2作目の宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」では高崎映画祭新人賞、安藤サクラらと共演した初主演の3作目「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」では毎日映画コンクール新人賞を受賞した演技派・伊東蒼(16)が、「さがす」(1月21日公開、片山慎三監督)で主演・佐藤二朗の娘役を好演している。天才的な若手はどのように役に臨むのか。
伊東蒼インタビュー、映画「さがす」で主演・佐藤二朗の娘役
6歳のときからキャリアをスタートさせ、高校1年生。映画出演2作目の宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」では高崎映画祭新人賞、安藤サクラらと共演した初主演の3作目「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」では毎日映画コンクール新人賞を受賞した演技派・伊東蒼(16)が、「さがす」(1月21日公開、片山慎三監督)で主演・佐藤二朗の娘役を好演している。天才的な若手はどのように役に臨むのか。(取材・文=平辻哲也)
あどけない容姿で、少女らしい危うさを見せる伊東。しかし、「子役」と呼ぶのは、もう失礼な年齢かもしれない。10代にして、演技派。子役から10年、日本を代表する監督や新鋭と組み、ベテラン俳優を相手にいろんな娘役を演じ、観客の心をわしづかみにしてきた。
「さがす」は、「パラサイト 半地下の家族」で米アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督の下で助監督を務め、「岬の兄妹」がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018国内コンペティション長編部門優秀作品賞&観客賞などを受賞した片山慎三監督の商業映画デビュー作。指名手配犯(清水尋也)を見つけたと言い残し、失踪した父・原田智(佐藤)を探す娘・楓の姿から始まるオリジナルサスペンスだ。やがて、物語は予想もつかない展開を迎えていく……。
「台本を読んで、すごくやりたいと思いました。映画館でやっていても、絶対見に行きたいと思った作品でもあったので、オーディションで決まったときはうれしかったです。撮影が始まるまでは毎晩、台本を読み込んで、楓ちゃんが聴いてそうな曲とか、自分が楓ちゃんをイメージできる曲を集めて聴いたり、ずっといろんなところで、楓ちゃんと結びつくところを探していました」
音楽を聴いて、イメージトレーニングとは、大一番の試合を前に、音楽で集中しようとするアスリートのようだ。「音楽を聴いて役作りというのは初めてでした。楓ちゃんには強いっていうイメージがあったんです。ずっとBiSH(6人組ガールズグループ)を聴いていました。卓球は撮影3週間前から練習が始まりました。ラリーの特訓をやっていたので、本番でもちゃんとできるかなと思ったんですけど、お芝居をしながらのラリーは難しかったです」。
撮影が始まったのは2021年春、高校受験を終えた直後だった。「佐藤二朗さんは本当のお父さんのように優しく接してくれました。高校の話をしたり、合間にゲームされていたのを見ていたり」。
撮影では、片山監督は粘り強い演出を見せて、戸惑うことも。「同じシーンで何テイクも撮るので、最初は本当に不安でした。やっているうちに、新鮮なリアクションができなくなるんじゃないかなって。でも、具体的に“こうしてほしい”って言ってくださるので、自分の中で新しい楓ちゃん像ができあがっていきました。最初は意識してやっていた動きとか仕草もなじんでいって、動き以外にも意識を向けられるようになりました。『もっとこうしたらよかったな』という反省をしながら帰ることがなかったです」と振り返る。