裏方を「人で選ぶ」結婚式の潮流 プランナーあり方の変化、コロナ禍の試行錯誤
「プランナーやクリエーターを『人で選ぶ』新郎新婦が増えてきています」
ウエディングプランナーの本来の仕事は、新郎新婦に見合った的確なアドバイスを送り、時には決定事項に責任を持つこと。コロナ禍では、この職業観すら覆された。相次ぐ変異株の出現や国・自治体による感染対策の変更など、不確定要素が多い。先が見えない中で、とりわけ「延期の決断」は困難を極めている。心理面でも常に不安を抱える新郎新婦とのコミュニケーションは慎重を期しているといい、「言葉選び一つとっても細心の注意を払っています。自分の価値観を伝えるべきか、伝えるべきではないのか、すごく悩みます。カップルによって考え方も異なるため、2人が何度も話し合うのをじっと見守って議論を尽くしたうえで決めてもらうこともありますし、第3者のプロとして最後の判断を求められることもあります。アドバイスすることだけが『正解ではない』という、経験のないことの連続で鍛えられました」と話してくれた。
問い合わせが殺到する中で、情勢を見極めながら、提案することと同じぐらいに、ただただ寄り添って話をじっくり聞いてあげることも大事になってくる。コロナ禍で改めて気付いたのは、「1人の人間として向き合わないと、絶対に相手に伝わらない」ということ。まさに、試行錯誤だ。
全国的に第6波の懸念が強まる中で、フリーのプランナーとして新たな挑戦を始めた芳賀さん。危機に陥ったブライダル業界の今後は「柔軟な対応」がカギになると考えている。ゲストを呼べない状況に落ち込むだけではなく、「2人だけの開催」「誓いを立てる場所を自宅で行う」といった最小規模でも満足のいく方法を模索。「2人がこれならやってみたいという選択肢を作って可能性を広げていければ。新しい試みを楽しみとして捉えることができると思うんです。大胆なことを言えば、結婚式=披露宴という形式だけではないということを伝えていく。ただ、ゲストの皆さんの祝福の思いをどう新郎新婦に届けていくか。手段はいくらでもあるはず。もっともっと考えていかないといけません」と強調する。
プランナーのあり方にも変化が訪れている。従来の結婚式のプランニングでは、まず新郎新婦が会場を選んで、その会場専属のプランナーが対応する流れが一般的だ。一方で、SNS社会において“検索文化”が浸透したことで、新郎新婦が能動的に自分たちに合うプランナーや、カメラマンなどの各種クリエーターを探すケースも頻繁に見受けられるといい、「こんな結婚式をしたい、とか、こういった結婚式の事例がある、というところから始まり、気になる結婚式を担当してくれるプランナーやクリエーターを『人で選ぶ』新郎新婦が増えてきています。ここ数年でこうした傾向が強く出てきました」。人を選ぶことから始める結婚式という流れが今後、主流となってきそうなことも確かだ。
「場所にも形にもとらわれない」。そんな新たなスタイルにも可能性を感じている芳賀さん。理想として、人の温もりや人のつながりをより一層感じられる2人に合ったサイズ感の結婚式を思い描いている。「何かを一緒に成し遂げるって楽しいですよね。カメラマン、シェフ、美容師といったその道のプロの人たちと新郎新婦のためにチームを毎度作ってオーダーメードの結婚式を作ることもできます。新郎新婦と一緒に、人のつながりを大事に、新たな人生のスタートの日を丁寧に作り上げることができれば。そんなプランナーでありたいです」と話している。