不妊治療の保険適用、NPOが当事者の声を募集 治療費の不安や“質低下”の懸念も

2022年度から保険適用となる見通しの不妊治療。日本で不妊を心配したことがあるカップルは3組に1組、実際に不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは5.5組に1組ともいわれる。不妊治療患者をはじめ不妊・不育で悩む人をサポートするNPO法人「Fine」では、「不妊治療の保険適用に関する、みんなの意見募集」を実施。632人の回答を得て、その結果を厚生労働省と野田聖子少子化対策担当大臣に提出している。

「不妊治療の保険適用」に関して、当事者が挙げた「気がかりなこと」一覧
「不妊治療の保険適用」に関して、当事者が挙げた「気がかりなこと」一覧

日本で実際に不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは5.5組に1組といわれる

 2022年度から保険適用となる見通しの不妊治療。日本で不妊を心配したことがあるカップルは3組に1組、実際に不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは5.5組に1組ともいわれる。不妊治療患者をはじめ不妊・不育で悩む人をサポートするNPO法人「Fine」では、「不妊治療の保険適用に関する、みんなの意見募集」を実施。632人の回答を得て、その結果を厚生労働省と野田聖子少子化対策担当大臣に提出している。

 調査は2021年11月26日~12月5日の期間、不妊治療の当事者632人を対象に実施。回答者は「不妊治療中(一時的に休止中含む)」が68%、「過去の不妊治療経験者」が25%、「これから不妊治療を考えている」が4%、「その他」が1~2%となっており、性別では女性が97%、男性が2%、残りは「その他」と回答している。また、回答者の年齢は30歳代が68%、40歳代が15%、20歳代が14%、その他が1~2%、就業状況では「正社員(総合職)」が20%、「正社員(一般職)」が15%、「正社員(専門職)」10%、「パート・アルバイト」が17%、「就業していない」が20%、「その他」が1~5%などとなっている。

「不妊治療の保険適用」について、「期待すること」では「治療費が安くなる」が91%で最多に。「早いうちから治療に取り組むことができる」、「不妊治療が特別なことではないと常識になっていくかもしれない」、「周囲に話しやすくなる」、「職場の理解が得られ休暇が取れるなど(仕事と治療を)両立しやすくなる」などの声が上がった。

 一方、「気がかりなこと」では「かえって治療費用全体が高額になるのではないか」「助成金がなくなるのではないか」がともに5割を超えるなど、治療費に関することが上位に。「今と同じ治療であっても保険適用外のものが入ってしまうと混合診療ができなければ自費診療となる」、「自費診療になってしまって助成金がなくなればもっと治療費用が高額になってしまう」、「保険適用外のものがこの機会に値上げされるかもしれない」といった心配の声が上がっている。

 また、「チェックシステムがなければ質の低下が起こるのでは」、「技術の低下や全体のレベル低下になるのでは」、「不妊治療開始の敷居が低くなることで患者が急増して病院の質の低下が起こるのでは」、「型にはまった治療しかできず狭い選択肢になるのでは」など、かえって質の低下を招くのではといった気がかりの声も寄せられた。

 調査を行ったNPO法人「Fine」では、2021年12月17日に厚生労働省と野田少子化対策担当大臣に集計結果をまとめた報告文書を提出。当事者の生の意見や思いを届けるとともに、少しでも当事者が安心・安全で満足できる不妊治療の保険適用の制度設計を要請している。

 今回の調査結果を受け、「Fine」の松本亜樹子理事長は「不妊治療の経済的負担軽減に関しては、設立当初より当事者から切実な声が届き続けています。Fineが要望してきた中で、『治療成績の開示』や『第三者機関によるチェックシステムの確立』などは、今回の保険適用では触れられていないこと、また年齢や回数制限がこれまでの特定不妊治療助成事業を踏襲したものであり、患者の現状を鑑みると厳しい制約と言わざるを得ないことなどを踏まえ、これからも引き続き保険適用に関する要望を届け続けていく必要性を感じています」と話している。

次のページへ (2/2) 【図】「不妊治療の保険適用」に関して、「気がかり」と回答した理由一覧
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