【週末は女子プロレス♯31】元アイドルの2人が東京Dのリングへ スターダム中野たむ&上谷沙弥が演じた奇跡のドラマ

どちらのフェニックスが最強なのか 上谷沙弥は飯伏幸太とのシングルマッチを渇望している【写真提供:スターダム】
どちらのフェニックスが最強なのか 上谷沙弥は飯伏幸太とのシングルマッチを渇望している【写真提供:スターダム】

上谷が口にする壮大な野望「無謀に近い夢かもしれないんですけど」

 中野は上谷を無理やりプロレスラーにさせてしまったことに後悔さえ感じていたというが、実際はむしろその逆。上谷は中野に感謝しているのだ。挫折の連続から誘ってくれたのが中野。上谷はプロレスによって、いままで気づかなかった潜在能力を開花させることができた。

 そんな上谷が恩人の中野とタッグを組んで東京ドームのリングに上がる。この2人が組むのは20年1・26大阪での一度きり。同じ時期に3回ほど8人タッグマッチで同じコーナーに立ってはいるものの、上谷がクイーンズクエスト入りしてからは一度も組んでいない。こういったスペシャルな機会でもない限り、今後も組まれることはないだろう。今回の東京ドーム参戦後、上谷は2年前の出来事とともに中野とのタッグをこのように振り返った。

「大阪で組んだとき、入場のダンスはビシッと決まったのに試合となると全然息が合わなかったんですよ(苦笑)。ドームで久しぶりに組んだんですけど、タッチをしようとしたらタイミングが合わなくて、ああ、やっぱり合わないんだなと思っちゃいました(笑)」

 とはいえ、試合に支障をきたすほどのものではない。2年前のことを上谷と同じように記憶していた中野はむしろ、「今回は違いました。とくに連係という連係はしてないですけど、2人で何をしようとか話さなかったわりには不思議と呼吸が合って、いいチームなんじゃないかなって。自分には(上谷と組む)こういう未来もありなんじゃないかと思えるタッグでしたね」と好感触。このズレがまた、現在の両者らしい感覚ではあるのだろう。

 それにしても、2人が描いてきたドラマといったら奇跡的というしかない。上谷はかつてEXILEのバックダンサーとして東京ドームのステージに立った。アイドルとしてかなえたい夢が別の形で現出したのだ。アイドルでは芽が出ず、こちらも同じくアイドル活動で苦悩していた中野に声をかけられプロレスラーとしてデビューすると、新日本の東京ドームに参戦できた。ならばスターダムの東京ドームを実現させ、そのリングに立つのが究極の目標ではないか。

「そうですね。やっぱり東京ドームは夢の舞台です。実現の際には、私がメインで立ちたい(笑)。先日、白いベルトを取って、たむさんが大切な存在なんだと改めて感じたし、念願のベルトとともにやっと師匠を超えられたと思いました。なので、これから新時代の王者として誰も見たことのないようなものを刻んでいきたいなと思っています!」

 王者としてスターダムを大きくしていく。これが新しい夢になった。そしてさらに、もうひとつの夢ができたという。それは試合後のバックステージで彼女の口から明らかにされた。なんと、飯伏幸太(欠場中)とのシングルマッチである。

「まだまだこの新日本プロレスさんのリングで、夢がひとつあります。それは、自分の憧れの飯伏幸太選手とシングルマッチをすることです。飯伏さん、どちらのフェニックスが最強か、勝負していただけませんか?」(試合後のコメント)

 この日、上谷は飯伏からインスパイアされたフェニックススプラッシュでピンフォールを奪った(上谷はドームで3勝1敗。3勝すべてがフェニックスからの勝利)。プロレスを知らなかった上谷は練習生になってからプロレス動画をむさぼり飯伏を発見、その動きに衝撃を受け魅了された。そして自分の動きに取り入れた。飯伏が上谷の目標とするプロレスラーとなったのだ。目指すは女子ナンバーワンのハイフライヤー。その先に、男女の垣根を超えた対戦を描いているのである。

「無謀に近い夢かもしれないんですけど、言わないと伝わらないし、現実にならないと思ったので勇気を振り絞って言いました」と、上谷。実現のためにも上谷は白いベルトの王者としてワンダー王座の価値を上げていく作業が求められる。中野との再戦もまた、視野に入れておく必要があるだろう。彼女の性格からしても、このまま引き下がるはずがない。

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