「紅白」の視聴率はなぜ下がったのか お祭りムード縮小で「紅白は過渡期にある」

昨年大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」の関東地区の平均世帯視聴率が第2部で34.3%と、2部制になった1989年以降ワースト記録となったことが2日、ビデオリサーチの調べで分かった。前年(2020年)の2部40.3%から6ポイントもダウンした背景を探った。

紅白歌合戦の視聴率ダウンの背景とは?【写真:ENCOUNT編集部】
紅白歌合戦の視聴率ダウンの背景とは?【写真:ENCOUNT編集部】

第1部31.5%、第2部は前年から6ポイントダウンの34.3% 2部制になって最低

 昨年大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」の関東地区の平均世帯視聴率が第2部で34.3%と、2部制になった1989年以降ワースト記録となったことが2日、ビデオリサーチの調べで分かった。前年(2020年)の2部40.3%から6ポイントもダウンした背景を探った。

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 ビデオリサーチによると、2021年12月31日に放送された主な民放の番組の関東地区の平均世帯視聴率は、日本テレビ系「笑って年越したい!笑う大晦日」(午後6時30~)が7.2%、紅白第2部と重なる午後9時以降の放送枠は5.6%だった。同局が前年大みそかに放送した「ガキの使い!年越しSP絶対に笑ってはいけない大貧民Go Toラスベガス24時」の午後9時台は14.1%とハイレベルな数字を記録していたことから「笑って年越したい!笑う大晦日」が紅白の数字ダウンに影響したとは思えない。

 また、テレビ朝日系「ザワつく!大晦日一茂良純さち子の会」(午後6時~)は12.1%、紅白第2部と重なる午後8時以降の放送枠は9.3%と、前年の6.7%から2.6ポイントアップした。

 この2番組は午後7時から午後10時59分までの間に15分以上放送された番組で、個人視聴率が5%以上を記録した番組。つまり視聴率が良かった主な番組として紹介されている。この日は他の番組の数字は明らかにされていないが、この2番組の数字だけで、裏番組が紅白の視聴率に大きく影響を与えたとは判断しづらい。

 近年の紅白歌合戦の出場者は、7割近くが前年と同じ顔ぶれで、サプライズ出演者に新鮮さを期待する傾向にあった。また、テレビの音楽番組が昔と比べて少なくなっている中、年配者は街を歩いていると自然に耳に入ってくる楽曲に、今、こういう曲がはやっているのかと知ることができた。コロナ禍で外を歩く機会が減った今はそれも難しい。特に日頃、ネットに密に接していない高齢者には最新曲に触れる機会は稀有(けう)な状態。第72回紅白歌合戦の初出場者の名前を知らなかったという年配者の声が周囲から少なからず聞こえた。初めてテレビで歌うアーティストもいたのだから当然かもしれない。

 NHKの視聴者層は年齢が比較的高く、若い視聴者層の拡大は、長年、NHKが目指していること。そんな中、昨年の紅白は、テレビよりネットで音楽に触れる機会が多くなっている時代と紅白の将来を考えて若い世代を意識した紅白だったようにも感じる。

 上白石萌音は「夜明けをくちずさめたら」をYouTubeで人気のピアニスト・角野隼斗氏の演奏によるスペシャルバージョンで歌った。ただし、年配者を置き去りにしないようにという意識も感じ取れた。たとえば石川さゆりの歌唱シーンに、ラッパーのKREVAとギタリストのMIYAVIがゲスト出演し、ジャンルを超えたパフォーマンスを見せた。演歌好きにはなかなか触れ合うことのないアーティストかもしれないが、この紅白で魅力を知ることができたかもしれない。

 一方、昨年の紅白は、厳しいコロナ禍だった前年の無観客と異なり、有観客で行われたが、逆に言えばテレビを見ずに外出した人も前年より増えていたはず。時折、映し出されるソーシャルディスタンスによる観客席の空席は何かさみしい印象を与えた。コロナ禍に加えて慣れたNHKホールを離れた紅白。出場者のパフォーマンスを他の出場者が大勢で応援する姿も、数百人単位のバックダンサーが登場する機会も例年より少なかった。出場者のパフォーマンスを盛り上げる、驚くような大がかりなセットの演出は影を潜め、ステージ上の美しい花と映像が中心だった。結果、例年と比べて全体的にお祭りムードが足りなかったように思える。

 司会者が紅組と白組に分かれていないことは、紅白が変わろうとしている動きに感じた。テーマ「Colorful~カラフル」も紅白が、これまでの色のままでなく、今後、時代に応じ、視聴者の期待に一層こたえるため、いろんな色を帯びて変化していくというメッセージにも思えた。昨年の紅白は、これからの紅白がどうあるべきかを考える上で、1つの試金石の意味があったように感じる。放送関係者からは「紅白は過渡期にある」との声も聞こえた。

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