AKB48が手放した「連続ミリオン記録」、2年連続“紅白落選” 大きくかじを切った2021年

「根も葉もRumor」は「本家AKBメンバー」のみの選抜

 コロナ禍がエンタメ業界に与えた経済的打撃は「会いに行けるアイドル」であるAKB48にとっても甚大なものであったはずだ。20年にリリースしたシングルは「失恋、ありがとう」のみにとどまった。しかし「オールスター選抜方式」でしっかりとミリオンを売り上げ、自身が持つ国内の連続ミリオン記録を38作品にまでに伸ばしたのはさすがである。

 そして21年、最新曲「根も葉もRumor」でAKB48は「連続ミリオン記録」から自ら潔く降りる形を取る。長引くコロナの影響でファンはメンバーに会いに行くこともままならなくなったことや、相次ぐ主要メンバーの卒業など、その決断にはさまざまな要因があったことが想像できるが、あえて今回、再出発をかけることを高らかに宣言するかのように「本家AKBメンバー」のみで選抜したことは大英断であったと筆者は考える。

 センターに現在のエース格である岡田を起用。圧巻のダンスパフォーマンスと、練りに練った楽曲で勝負をかけてきた。彼女たちの実力は今や「見れば誰でも分かる」レベルにあると言える。テレビの歌番組でのパフォーマンスをご覧になった方は、筆者に同意してくれるのではないか。

 年末のレコード大賞にも出演するAKB48の現在の魅力を、ぜひみなさんのその目で確かめてほしいと思うのだ。

 筆者自身、作曲家であり、今回のシングルを決める「楽曲コンペ」にも何曲か渾身(こんしん)の作品をエントリーしたが、まったくもって「根も葉もRumor」の素晴らしさには白旗を揚げるしかない。新しさと懐かしさのハイブリッド版、まさしく「シン・歌謡曲」である。

 確かに、全盛期の売り上げには今は届かないのかもしれない。紅白に2年続けて落選するほどに世間一般への希求力は弱まったのかもしれない。しかしながら「根も葉もRumor」をテレビで生き生きとパフォーマンスする姿や、YouTubeで独自の表現を続けるメンバーを見るにつけ、筆者は次のブレークを予感し、期待してやまないのだ。

 いずれ大きく勝つためには、今は小さく負けることも必要なのである。コロナ禍や紅白落選といったピンチの状況だからこそ、新しいチャレンジを続けること。今のうちに体勢を整え、力をたくわえておくことが肝心だと、AKB48は現在そう考えているのではないか。

 まさに数年後の強いチームを見据えて若手主体のメンバー構成にかじを切るスポーツチームのようにまなざしは少しだけ遠くに置いておくということか。

次のページへ (3/3) 専用劇場で伝統を守り続ける続けるAKB48の伝統
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