AKB48が手放した「連続ミリオン記録」、2年連続“紅白落選” 大きくかじを切った2021年
専用劇場で伝統を守り続ける続けるAKB48の伝統
15年以上の長きにわたって、日本の歌謡界のトップを走り続けるAKB48の輝きは消えることはない。大切に歌い継がれる楽曲の数々はプロ中のプロの作曲家たちの作品から厳選されたもので、すべてに聞きどころが用意された良作たちである。
筆者もこの15年間で20曲、48グループに楽曲提供してきた。そのすべてを彼女たちはステージやネット上で、今なお大切に歌い継いでくれる。作曲者冥利(みょうり)に尽きるとはこのことだ。900曲を超えるAKB48名義の楽曲たち。先輩たちがそれらの曲を歌う姿に憧れてAKB48のオーディションを受けた世代である現メンバーたちはその「伝統」を守る女神たちだ。
そして、ホームグランドである「AKB48劇場」がある限り「伝統」は受け継がれていく。ミリオン連続記録と紅白という2つの勲章を、いわば一旦手放すという勇気ある決断を下し「AKB48の本家メンバー」での再出発となった21年。彼女たちはこれからも圧倒的な努力をし続けるのだろう。そうである限り、来年以降どこかのタイミングで上昇気流に乗って再ブレーク、紅白にも返り咲く日がきっと来ると、筆者は信じている。
「It ain’t over ‘till it’s over(=終わるまでは終わりじゃない)」
世界的アーティストのレニー・クラヴィッツが1991年にヒットさせた曲のタイトルだ。筆者はこの言葉が好きだ。元々は往年のメジャーリーガーによる名言だ。どんなに窮地に追い込まれようが、ゲームが終わるまでは終わりじゃないという意志が込められている。
AKB48のメンバーのひたむきさ、がむしゃらさを見ていると、いつも筆者は良質なスポーツチームと重ね合わせる。エースはもちろん重要だが、それだけではチームは勝てない。サポート役もムードメーカーも必要だし、クセのある個性派の選手の出番もふんだんにほしい。時には意見がぶつかり合うこともあるだろう。それでも、さまざまな選手たちが1つの目標に向かって努力し続ける姿、結果を出そうとがんばる心、伝統を守ろうとするプライド、それらの一つ一つがとても美しく輝いて見えるのだ。
そう。ゲームは終わるまで終わりではないのである。AKB48がオワコンだなんて、一体誰に言えるだろう?
(終わり)
□成瀬英樹(なるせ・ひでき)作詞・作曲家。1968年生まれ。兵庫県出身。92年、4人組バンド「FOUR TRIPS」結成。97年、TBS系ドラマ「友達の恋人」(瀬戸朝香・桜井幸子主演)の主題歌「WONDER」でデビュー。2006年、AAA「Shalala キボウの歌」で作曲家デビュー。AKB48提供「BINGO!」「ひこうき雲」、前田敦子「君は僕だ」「タイムマシンなんていらない」などがトップ5ヒット。16年、AKB48のシングル「君はメロディー」でオリコン年間チャート2位を記録するミリオンセラーを達成。21年、乃木坂46「全部 夢のまま」を作曲。