2021年ブームの象徴「シン・エヴァ」 新たな若者ファン取り込む“果てしない魅力”とは

26年の歴史重ねたシリーズ 過去をさかのぼる楽しみも

 3月に公開スタートした本作は7月の終映まで、興収ランキングを盛り上げた。映画館には9回鑑賞しに行ったのだが、印象的だったのは、若者の多さだった。制服姿の学生、カップル、4DX版の上映では大学生だろうか男女グループも見受けられた。30代の筆者より明らかに年下の観客の姿に驚いた。

 エヴァの取材に継続して取り組む中で、別部署の20代の同僚から、「実は『:序』からエヴァ好きになって。記事読んでますよ」と声をかけられたこともあった。世代を問わない作品の吸引力をまざまざと感じた。それに、エヴァはファッションをはじめさまざまな分野とのコラボが有名で、“日常生活のどこかで自然と目に入る”と言っても過言ではない。若年層へのリーチは着実に成功している。シン・エヴァは、テレビアニメ版や旧劇場版、漫画版(いわゆる貞本エヴァ)とは異なる新しい物語を描いた。新規ファンには過去をさかのぼる楽しみがあることが、少しうらやましい。

 最後にわがまま承知でマニアックなことを書かせてもらいたい。年末になると、「今年のヒット曲・流行歌」が話題に上がる。エヴァファンとして“今年の1曲”を挙げるなら、松任谷由実の「VOYAGER~日付のない墓標~」だ。

 もともとは1984年のSF映画「さよならジュピター」の主題歌だが、シン・エヴァでは極めて重要なシーンで、綾波レイや主人公シンジの母・ユイを演じた林原めぐみの歌唱バージョンが使用されている。私見だが、遠いところに行ってしまった誰かに思いをはせるような歌詞の内容は、エヴァのために書かれたとしか考えられない。それぐらい完璧にマッチしている。絶妙な選曲だ。

 庵野監督とユーミンの組み合わせと言えば、庵野監督の師匠と言える宮崎駿監督作品の「風立ちぬ」(13年)だ。同作の主題歌は、荒井由実の「ひこうき雲」。主人公の声は庵野監督が務めている。きっと深い縁が導いたのかもしれない。

 またいつかどこかでエヴァに会えるのか。その日が来るまで、願いを重ねながら、何度も見返して、まだまだ気付いていないであろう魅力をどんどん探していきたい。

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