“コロナの女王”岡田晴恵が今、伝えたいこと「このパンデミックはなかなか終わらない」
記者には「あなたももう飲んでるんでしょ?」とけん制
――タイトルは「秘闘」だが、コロナだけでなく政治やメディアなどいろんなものと闘ってきた。
「政治家が批判されることもあるけど、それよりも、政治家に危機管理を伝えるべき専門家に、コロナに対する楽観視があったと思います。さらに、日本が何かをやって失敗するより、何もやらずに失敗したほうがダメージが少ないという社会構造だから、リスクをとってまで最悪の事態に備えるという考え方が感染症の専門家にはできなかったのでは? 調整型のトップが生き残る社会では、平時はそれでいいかもしれないけど、感染症流行時のような緊急時では、最悪の事態を想定して大ナタを振るえる人がトップじゃないと対策が間に合わない。
サイエンスを貫く提言を専門家が政治家に言い続ける事が大切です。サイエンスを貫かなければウイルスに負ける。ひよったらダメなんです。そのためには、大ナタをふるうような対策を事前に取っても、批判しない国民の理解の醸成も必要です。そんな危機管理を許容できる社会じゃないとグローバル化した21世紀の新型ウイルスは封じ込められない。感染症対策に対する日本人の意識を変えることが、一番の闘いだったかもしれません」
――揶揄(やゆ)的なニュアンスの「コロナの女王」という呼称についてはどう思うか。
「そういうことは私にとってはどうでもいいんです。今は緊急事態で、国民の危機管理意識の話をしていて、それと比べて私の事なんか、どうだっていい。政治だけでなく、そういう世の中の意識も変わって行って欲しい。今また新しい変異ウイルスも出ている。ワクチンの3回目接種も進んでいる。あなたももう(飲み会で)飲んでるんでしょ? 顔にそう書いてあるもの。飲みに行く前に、1度この本を読んでこの2年間を振り返ってみてください。これは今後をどう乗り切るかを考えるという目的で書かれた本ですから」
■岡田晴恵(おかだ・はるえ) 白鴎大学教育学部教授。共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士号を取得。国立感染症研究所、ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所、経団連21世紀政策研究所などを経て、現職。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演、専門書から児童書まで幅広い執筆、講演活動などを通して、新型コロナウイルスを始めとする感染症対策に関する情報を発信している。12月22日に告白手記「秘闘 私の『コロナ戦争』全記録」(新潮社)を刊行する。