M-1優勝は「恩返しでなく罪滅ぼし」 錦鯉・長谷川が明かしたギャンブルとの“決別”
「M-1グランプリ2021」で、過去最多6017組の頂点として第17代王者に輝いた錦鯉。例年M-1王者は放送直後から寝る間もなく仕事が舞い込み、それまでの生活が一変するのが風物詩だが、錦鯉の場合、飛躍のきっかけは4位進出した昨年大会にさかのぼる。12月上旬、初の自叙伝「くすぶり中年の逆襲」出版に際し取材した長谷川雅紀が、M-1決勝直前に漏らしていた本音を公開する。
明かした家族への思い「親孝行? いやいや、まだまだこれからですよ」
「M-1グランプリ2021」で、過去最多6017組の頂点として第17代王者に輝いた錦鯉。例年M-1王者は放送直後から寝る間もなく仕事が舞い込み、それまでの生活が一変するのが風物詩だが、錦鯉の場合、飛躍のきっかけは4位進出した昨年大会にさかのぼる。12月上旬、初の自叙伝「くすぶり中年の逆襲」出版に際し取材した長谷川雅紀が、M-1決勝直前に漏らしていた本音を公開する。(取材・文=佐藤佑輔)
「くすぶり中年の逆襲」は、2人がこれまでの人生を振り返った自叙伝。幼少期から2人の出会いまで、いわば“プロローグ”とも呼べる部分に、全5章のうちの実に3章を費やした構成となっている。そしてそこには、「弟のパソコンを勝手に質屋に入れる」、「寝る間も惜しんでパチンコに通う」、「50歳手前まで母親に金の無心をする」など、長谷川の強烈なエピソードが随所に散りばめられている。
昨年のM-1決勝では「一番好きな題材で」と迷わずパチンコネタをチョイス。審査員の松本人志や同じ事務所のバイきんぐ・小峠英二からは「パチンコをしない人には伝わらない」と批評された。それほど大好きなパチンコ通いはまだ続けているのか。取材終盤、長谷川に聞くと、意外な答えが返ってきた。
「パチンコはもうやめました。去年のM-1後から行ってません。忙しくてそれどころじゃないというか、パチンコに行くくらいだったら家で寝てたいんです。僕ももう50歳ですから」
寝る間を惜しんでパチンコに興じていた男とは思えない、まさかのギャンブル卒業。そこから話題は長谷川の家族のことに続いた。
「(本を出せたのは)めちゃくちゃうれしかったですね。30年以上前に亡くなったおじいちゃんの写真が載ってるんですけど、ずっと連絡を取ってなかった家族と『まさかこの令和の時代に、おじいちゃんが本に載るなんて誰一人思わなかったよね』と話をした。墓前にも見せに行ったと聞きました。親孝行? いやいや、まだまだこれからですよ」
その場で相方の渡辺隆が「雅紀さんの場合、恩返しじゃなくて罪滅ぼしだからね」と冗談めかしていうと、長谷川も「これから一生かけて償っていくからね……って、おかしいよ! 罪滅ぼしは言い過ぎだよ」と応じる。誰からも愛されるおじさん芸人にも、過去にはいろいろあったのだと感じさせられるインタビューだった。
今年のM-1決勝の登場シーンで、「M-1とは」という問いに長谷川は「人生を変えられるもの」と記した。昨年の決勝進出で、すでに大きく変わりつつあった2人の人生。同書の出版を「終活」「エンディングノート」と位置付けていた長谷川が、生まれ変わった今どんな“罪滅ぼし”をしていくのか。異色のオールドルーキーへの興味は尽きない。