【電波生活】「ファミリーヒストリー」驚異的な調査力の秘密 番組関係者「警察の聞き込みと一緒」

人気番組や注目番組の舞台裏や魅力を探る企画。今回はNHK「ファミリーヒストリー」(月曜午後7時30分、月1回放送)。著名人の先祖など家族の歴史をひも解いていくドキュメンタリー。NHKエンタープライズのシニア・プロデューサー・赤上亮氏に、番組誕生秘話や家族の歴史を探る驚異的な調査力、取材力の秘密を聞いた。

MCを務める今田耕司(右)と池田伸子アナ【写真:(C)NHK】
MCを務める今田耕司(右)と池田伸子アナ【写真:(C)NHK】

シニア・プロデューサー・赤上亮氏が明かす舞台裏 原点は前任者の義父の家族史

 人気番組や注目番組の舞台裏や魅力を探る企画。今回はNHK「ファミリーヒストリー」(月曜午後7時30分、月1回放送)。著名人の先祖など家族の歴史をひも解いていくドキュメンタリー。NHKエンタープライズのシニア・プロデューサー・赤上亮氏に、番組誕生秘話や家族の歴史を探る驚異的な調査力、取材力の秘密を聞いた。(取材・文=中野由喜)

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 まずは、番組が始まった経緯について質問してみた。

「企画したのは前任の小山というプロデューサーです。彼の義父が亡くなる前、病室でご自身の人生の足跡をとうとうと話し始めたそうです。小山もそれを聞いていたわけですが、身内の話でありながら、時代のうねりの中で生きてきた1人の人間の生活史、家族史に心を打たれたそうです。その時の経験が、番組を生み出す種になりました」

 意外にも番組の原点はプロデューサーの義父のファミリーヒストリーだった。それにしても出演者の家族史は感動的。どんな人に出演してもらっているのか。事前の調査はするのか?

「もちろん、基本的にはご家族の歴史に興味がありそうな方に出演していただいています。VTRを見るモチベーションも上がりますし、一緒に番組を作っているという一体感が出てきますから。事前に取材をしてオファーをすることはほとんどありません。出演を承諾いただけたら、そこから一生懸命調べます」

 とにかく家族史をひも解く調査力、取材力のすごさに驚かされる。元記者や調査の専門家が携わっているのだろうか。

「リサーチャーやアシスタントディレクターが手伝うこともありますが、調査のメインとなるのは、放送回ごとの担当ディレクターです。1人のディレクターの気づきや発見が、番組の骨格を作っていきますから、複数のディレクターで分担することはありません。これまでNHKや外部の制作会社のディレクターなどが担当してきました。特に、調査に関して特別な専門性があるわけではありません」

 それでは調査に当たって、何か特別な手法はあるのか。

「手がかりを1つ1つたどっていくしかないんです。たとえば古い戸籍の住所を実際に訪ねてみて、家が残っているかどうかを確認し、近所の人に昔の話を聞いたりする。学校や職場などが分かれば、名簿を見せてもらったり、同級生や同僚を探す。数珠つなぎのように調べていきます。警察の聞き込みと一緒です(笑)。調査の過程で、ディレクターも発見を繰り返しているんです。他の番組ですと、取り上げるテーマの専門家がいて、初めに専門家に取材すると大体のアウトラインを把握できることもあります。しかし、この番組は、調査の道筋や方向性はディレクターが見極め、発見していく必要があります」

 調査が困難を極め、なかなか目的を達せないこともありそうだが。

「絶対にある、たどり着けると信じて調べ続ける。それしかないです。不思議と最後には『おっ』という話が出てくるんです」

 あらためて番組の魅力を聞いた。

「自分の先祖が何を大切にして、どのように生きてきたのか。それは出演者の方にとってはとても貴重で、時には人生観すら揺さぶられる情報です。それを一から発掘していき、VTRにまとめて本人にぶつけることが、スタジオでの反応のリアリティーにつながっています。一方で、大きな時代のうねりの中で市井の人たちはどう生きていたのか? 教科書などには載らない生活史はとても貴重です。一人の人間の人生を通して、時代をとらえ直すことにもつながると思います」

 ディレクターは長い期間、決して熱意を失わずに、埋もれた情報があると信じて地道な調査を続けているという。

□「ファミリーヒストリー」 2008年にスタートした著名人の家族の歴史や絆を見つめるドキュメンタリー。MCを今田耕司、池田伸子アナが担当し、語りを余貴美子が務めている。次回は2022年1月31日に中村雅俊のファミリーヒストリーが紹介されるという。

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