若き王者・野村卓矢は猪木の映像から「闘魂」学んだ V3挑戦者は破壊王の息子・橋本大地
2人の先輩・岡林裕二は「今の野村と大地は、どっちが勝ってもおかしくない」
技も殺気もたたずまいも、すべてにおいて猪木は野村にとって永遠の憧れ。「喜怒哀楽をあれだけリング上で表現できる人はいない」と、鬼気迫る表情にも酔いしれる。
もちろんファン時代も素晴らしいと思っていたが、自分がプロレスラーになってからは、さらにそのすごさを身を持って実感しているという。一挙手一投足で会場を興奮のルツボにし、ファンを熱狂させ、客席をもリングにしてしまう。猪木はまさに唯一無二の存在なのだ。
「ゴッチさんがプロレスの神様なら、猪木さんはプロレスの先生。昔はたくさんの強敵と、そして今は難病と闘っている。闘魂は不滅だと改めて感じた。いつ何時でもプロレスラーである猪木さんを見習いたい。猪木さんを思うとがぜん、力が入る」と、普段は寡黙な野村が目を輝かせる。
昨年、訪れたプロレスの神様カール・ゴッチの墓前では、深く静かに頭を下げ、さらに強くなることを願い、墓石をそっと優しくなでていた。先人へのリスペクトの気持ちが大きい。
大地は「父は父、自分は自分」と、常に未来を見て前に進んでいる。野村は温故知新で歴史と伝統を重んじる。プロレスラーは十人十色。バックボーンもプロレスに対する考え方もみんな違う。だが、四角いジャングルで闘う男の心の中には必ずや闘魂が宿っている。
「プロレスは闘い。大地選手も“闘い”を人一倍、意識していると思う。彼の歩んできた道もリスペクトしている。その上で、最強で最高な試合をしてみせます!」と、野村の心は燃え上がっている。
2人の先輩である岡林裕二は「今の野村と大地は、どっちが勝ってもおかしくないハイレベルなものすごい試合になると思う。そして勝った方に1・2後楽園で俺が挑戦する」と決戦の行方を注視している。
卓越した矢が、大いなる地を射抜くか。あるいは大地が矢をはね返すか。
お互いの闘魂、信念、矜持、生きさまがリングで激しくぶつかる。火花散らす魂の対戦が待ちきれない。(文中一部敬称略)