藤井4冠がガックリ肩を落としたJT杯決勝 豊島九段の妙手はどこに? 真田圭一八段解説
藤井聡太4冠(竜王、王位、叡王、棋聖=19)が豊島将之九段(31)と戦う第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝が21日、「幕張メッセ」(千葉市)で行われ、先手の豊島九段が95手で勝利し大会連覇を達成した。タイトル戦で激闘を続けた藤井4冠対豊島九段という好カードとなったJT杯決勝を振り返る。
豊島九段が序盤から仕掛け壮絶な攻め合いに
藤井聡太4冠(竜王、王位、叡王、棋聖=19)が豊島将之九段(31)と戦う第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝が21日、「幕張メッセ」(千葉市)で行われ、先手の豊島九段が95手で勝利し大会連覇を達成した。タイトル戦で激闘を続けた藤井4冠対豊島九段という好カードとなったJT杯決勝を振り返る。
藤井4冠は躍進の一年だった。今年最後の大仕事となるか。一方の豊島九段は、散々な1年だったろう。タイトル戦は全て藤井4冠にやられてしまった。今後巻き直すためにも、ここで雪辱を果たしたいところだ。豊島九段は昨年もJT杯で優勝していて連覇がかかっている。相性のいい棋戦で思い入れも強いだろう。
本棋戦は公開対局。今年1年、大舞台で戦い続けた両対局者を直に見られた観戦者は貴重な経験になったと思う。
さて、JT杯は超早指し棋戦だ。持ち時間は10分で、すぐに一手30秒の秒読みになってしまう。問われるのは直感力。そして迷っているヒマはないので決断力も必要だ。
対局は豊島九段の先手で始まり角換わりに。25手目▲3五歩と序盤から仕掛けたことで一気に激しくなった。対する藤井4冠も負けてはいない。34手目△7五歩から右銀を捌きに行ったことで壮絶な攻め合いとなる。この辺り、タイトル戦なら一手に1時間~2時間使ってもおかしくないところ。特に、藤井4冠は中盤の折衝で形勢を損ねることが圧倒的に少ない。逆に少しでもリードを奪えば再逆転を許さない力がある。早指し棋戦は微妙なバランスの中盤での構想を練る時間がない。
藤井4冠は、本局では激しく攻め合うことで終盤勝負に持ち込み、本来最大の武器と言われる終盤力を発揮したいという意図を感じた。
豊島九段は一歩も引かない棋風だ。激しい攻め合いとなった。本局は中盤で封じ手があり小休止がある。その封じ手、53手目▲6五角が攻防の好手だった。