eスポーツ選手は“カッコいい存在”へ 若手社長は「カルチャーを作り出す側」を目指す
日本eスポーツ界の“刺激剤”として 目指すのはモバイルeスポーツでの世界一
――日本のeスポーツ業界が転換期を迎える中で、REJECTとしてはどのように存在感を発揮していきたいですか?
「刺激剤になりたいと、僕はいつも言っています。僕らがやっていることは、業界全体に刺激を与えることが多い。スクランブル交差点にCMを出すということもそうですね。そこから刺激を受けて、いろいろな化学反応が起きる。それによって、日本のeスポーツ業界全体が盛り上がっていくんじゃないかと思っています。僕らにとって、周りが盛り上がってくれることは正義なんです。eスポーツのようなチームビジネスは、自分たちだけでは勝ち上がれなくて、数チームが一気に勝ち上がるもの。全員がお互いに敵対する必要はないんです。ある程度は仲良くしながら、かつ刺激を与え合いながら成長すべきだと思っています。その中で、僕らしかできない、若い会社だからできるアクションはたくさんしていきたい。やれるアクションはどこよりも早く、大きく。そうした理念のもとで行動しています」
――日本のeスポーツ・ゲーム業界はどう発展していくと思っていますか?
「日本のゲーム業界はすごく伸びていますよね。かつ、ゲームのダウンロード数に対して課金額がすごいとも聞きます。日本人は課金に対するヘイトがなくて、投げ銭に対しても同じです。カジュアルに募金できる人が多い。『楽しい』と感じたところにお金をかける文化があるので、僕たちは『楽しい』を作ることが収益につながっていくと思っています。
日本のeスポーツ市場を世界と比較すると、まだ規模が小さいですよね。直近のチーム買収の例を見ても、グローバルを目指していない。いろいろなところでお話しても、業界に対する理解というのが、まだまだ得られていないと感じます。ただ、単純に日本のeスポーツが劣っているというよりは、(日本では)eスポーツと捉えられない方がいいのかもしれないとも思っています。日本で最も流行っている『Apex Legends』はエンタメ大会がたくさんあって、バズることも多いですよね。スポーツとしての“eスポーツ”から一歩引いてしまう人たちも、ゲームの『楽しい』には集まってくる。ファミリーゲームが浸透している日本ならではの売り方だと思っていて、僕たちはいかにその層を取り込めるかも勝負だと思っています。ただ、この1年で一気に傾向が変わってきていることも感じていて、これからはわりと他国と似たような、強い人が伸びるような形にシフトしていくんじゃないかと思っています」
――今後数年間の発展へのイメージは、どのように持っていますか。
「早く海外進出をしたいと思っています。どんどん海外展開して、刺激を与えていきたい。中長期的にはしっかり外貨を稼ぐ存在になりたいんです。今の日本は、いろいろな技術職が海外に引き抜かれて、外貨を稼げない会社が多くなっていますが、eスポーツチームは外貨を稼げる業態だと思っています。今後の日本を背負う気持ちも含めて、外貨を稼ぐ会社になりたいですね。
そのためにも、まずはモバイルeスポーツで勝ちたい。PCの歴史とモバイルの歴史を考えると、PCで戦うのはどうしても分が悪い。海外は10年以上前から賞金が出ていて、勝つと人気になる文化がある。でも、日本ではそれがまだ成熟していない。僕はPCゲームがものすごく好きですが、だからこそまだ時間が必要だと思っています。でもモバイルはスタートの時期がほぼ一緒で、ハードもソフトも若い。努力すれば世界で勝てる可能性があるんです。特にシューティング系のゲームで日本が1位を取るということが、日本のeスポーツ業界にとってすごくプラスになると思っています。そのためにも、まずは『PUBG MOBILE』(※)で取りたい。今のeスポーツ業界のさまざまな出来事は、一般の方からすればどうでもいい、ニッチなこと。でも、例えば世界大会で優勝して、賞金10億円を獲得したとなれば『日本すごいな、eスポーツ来てるな』と誰もが理解できますよね。そのために、日本のeスポーツチームとして練習環境にお金を注いでいます。
当然勝たないといけないような練習環境はあると思っていて、あとは選手次第ですね。インターネット回線が強く、防音設備が付いていて、コーチングできる場所があり、メンタルトレーニングの先生も、プロスポーツ選手を多数指導されている方をお呼びしています。選手の健康管理のために専属の調理師もいますし、筑波大学とは睡眠や食事、糖分のとり方などについて、学術的な共同研究を行っています。僕が聞く範囲では、REJECTが日本で一番環境面にお金をかけている。それもモバイルeスポーツで世界一を取るためです。リアルスポーツと違って体格差も性別も何も関係なく、どんな人でも取り組めるeスポーツで、日本人がやっと勝てるタイトルとしてモバイルeスポーツが出てきたからこそ、そこで世界一を獲りたい。REJECTには、僕と同じ思いを持ってくれている選手が多いですね」
※REJECTは「PUBG MOBILE」のプロリーグ「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE SEASON1」で優勝し、世界大会進出を決めている