「イカゲーム」続編が具体化 監督は米名門大で映画製作学ぶ ストレスで歯が6本抜ける重圧も
ネットフリックス史上最大のヒット作となっている韓国ドラマ「イカゲーム」。脚本を担当したファン・ドンヒョク(黄東赫)監督がシーズン2の制作について「必ず出ると思う」と発言したことで、世界中のファンの期待が高まっている。「イカゲーム」の大成功でファン監督自身にも注目が集まっているが、「イカゲーム」の登場人物同様、経済的に苦しい時期があったという。
留学先の南カリフォルニア大はジョージ・ルーカスら名監督を多数輩出
ネットフリックス史上最大のヒット作となっている韓国ドラマ「イカゲーム」。脚本を担当したファン・ドンヒョク(黄東赫)監督がシーズン2の制作について「必ず出ると思う」と発言したことで、世界中のファンの期待が高まっている。「イカゲーム」の大成功でファン監督自身にも注目が集まっているが、「イカゲーム」の登場人物同様、経済的に苦しい時期があったという。
現地メディアによると、米ロサンゼルスで開催されたネットフリックス主催の「イカゲーム」(英語タイトル・Squid Game)広報イベントに主要キャストとともに出席したファン監督は「シーズン2を作らねばならない状態だ。頭の中にある程度構想がある。主人公のギフンが帰ってきて世界のために何かをする」と説明した。制作や公開時期など具体的なスケジュールについては未定だが、ネットフリックス側とファン監督の間で突っ込んだ話し合いが行われたのは間違いない。
実はファン監督はロサンゼルスと縁が深い。ファン監督は1971年生まれの50歳。国立ソウル大新聞学科(現・言論情報学科)を卒業後、南カリフォルニア大学(USC)の大学院に留学し映画製作学で修士号を取得している。同大はスタンフォード大学、UCバークレー、UCLAとともにカリフォルニア州を代表する名門大学。映画製作者の養成学校としても知られており、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・ゼメキス、「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」両シリーズのジョージ・ルーカス、「アポロ13」「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズのロン・ハワードなど名監督を多数輩出している。
2007年に「マイファーザー」で長編デビュー。幼い頃にアメリカに養子に出された青年が韓国で両親を探すという実話に基づいた作品で非凡な才能を示した。2011年には「トガニ 幼き瞳の告発」(原題は「るつぼ」)を発表した。聴覚障害者学校で実際に起きた生徒への性的虐待事件を告発する映画で、劇中で描かれた学校が閉鎖されるなど社会的に大きな反響を呼んだ。
同作の主人公を演じた俳優のコン・ユが「イカゲーム」の第1話に登場するセールスマンを演じているのも、ファン監督との親交があったからだ。「トガニ」は大ヒットしファン監督の出世作となった。
14年に発表した「怪しい彼女」は70歳の老女が突然20歳の頃の自分に若返ってしまったことから巻き起こる騒動を温かく描いたファンタジー。映画「新聞記者」で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したシム・ウンギョンが主演し(現在、NHKドラマ10「群青領域」に主演で出演中)、観客動員860万人という大成功を収めた。日本でも多部未華子主演でリメークされ16年に公開されている。
17年の歴史大作「南漢山城」(日本題「天命の城」)はイ・ビョンホンとキム・ユンソクがW主演し、坂本龍一が韓国映画の音楽を初めて担当したことで話題となった。コン・ユと同じようにイ・ビョンホンも「イカゲーム」にフロントマン役で出演している。ファン監督の手腕について韓国映画界からは「興行的にリスクのある作品や残酷なシーンについても美術や撮影の細部にこだわり、徹底した演出力で高く評価されています」との声が上がっている。
社会的問題に鋭く切り込む作品からファンタジー、時代劇まで幅広く手掛けるファン監督は苦労人でもある。父親が早くに亡くなったため、母親と祖母が苦労してファン監督を育てた。「イカゲーム」の主人公ソン・ギフンの母親と幼なじみのチョ・サンウの母親は自身の祖母がモデルになっている。2人はソウル道峰区双門洞(サンムンドン)出身という設定だが、ファン監督自身も庶民的な街として知られる双門洞で生まれ育った。サンウがソウル大卒で眼鏡姿というのも監督自身の姿と重なる。劇中のギフンとサンウの父親が不在なのはファン監督の生い立ちと深く関係しているのだ。
ファン監督が「イカゲーム」の脚本を完成させたのは2009年。当時は経済的に苦しくサバイバル漫画を読んでいるうちに、デスゲームを韓国式にしたらどうだろうかと考えたという。ネットフリックスでの制作が決まった後は撮影に苦労し歯が6本も抜けるほどの重圧にさらされた。シーズン2の制作は同ドラマファンにとってこの上ない吉報だが、ファン監督は「義歯をしないといけない」と苦笑い。社会の不平等と究極の人間性を描いた「イカゲーム」。優勝して456億ウォン(約44億円)を手に入れた主人公・ギフンは世界のために何をするのか――。シーズン2が待ち遠しい。