仲村トオル、「棒読み」との映画批評に「監督の狙いを忠実に再現できたんだ」
我を忘れるほど集中「現場で演じていた時間の記憶がほとんどよみがえらなかった」
普段は自分なりに役作りをして撮影に臨むが、万田監督作品では、あえて準備しないことが役作りになる。「自分をどこかに置いて現場に行って、どんな変化をするか実験してみる感じですね。少なくとも過去2作は、その実験の結果がとても好きだったんです。今回は3本目だったので、映像を少しイメージしながら読んだのかもしれないですけど、途切れない緊張感があって、底の見えないような素晴らしい映画になるだろうなと思っていました。そして、試写で見たら、思った通りの方向で思った以上でした」。
演じている間は我を忘れるほどだった。「撮影から時間がたっていましたし、こうして取材を受けるので、何回か見直して。そして、監督と杉野希妃さんと鼎談(ていだん)することにもなったので、さらに2度見直したんですけども、現場で演じていた時間の記憶がほとんどよみがえらなかったんですよ。演じる前、帰る時のことは覚えているんですけど。なりきっていたからとか、役が憑依していたから、というのとは全然違う感じです。映像に残っている時間帯、僕自身はほぼ止まっていたか、貴志という人物像を言われた通りに動かすことに集中していたか。多分、万田監督の演出ということもあったし、12日間で撮り切るという難易度、プレッシャーの中で撮影していたこともあると思うんですけども」。
本作は「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」(2016)以来の主演作だが、主演とか助演ということにはこだわりがないという。「出来上がったものを見た時に、この人の名前が3番目に出てくるのはおかしくないかと思うことはありますけど、自分が何番目かは、出演を決めるときにマイナス材料になりません。この映画も、気にしていなくて、(『UNloved』と『接吻』は女性が主人公だったため)また、変わった女性の話だな、と思って、当初は希妃さんが主人公役だと思っていました。出来上がった作品を観ても、杉野さん演じる綾子も主人公のひとりだと感じましたし、ヒロインであることには間違いありません。作品に参加する、しない、については、本が面白いか、面白くないかだけです」。
1985年に「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューし、俳優歴36年。同じ監督の現場に呼ばれるのはどう思っているのか? 「それは間違いなく、うれしいことです。キャリアを重ねると自然にそうなのかも知れませんが、今は多くが、監督や演出家の方、プロデューサーの方との2回目以降の仕事になっています。それは自分が最初だったり、2回目にした仕事がそんなに悪くない、むしろ認めてくれたからこそ、次があったんだろうと思いますからうれしいです」
そのための準備には怠りがない。体型はほとんどデビュー当時のまま。「神経質な理系のインテリ役が来ても、マッチョな肉体労働者の役が来ても、ある程度の時間で対応できるようにニュートラルな体型を維持することは意識していますね。自分がやりたい役が来た時に、準備の時間がないから、諦めるということはなるべく避けたいですから」