吉祥寺陥没で注目の“道路危険度マップ” 国交省に聞いた「ただちに危険ではない」理由
今月2日に東京都武蔵野市吉祥寺で起こった道路の陥没事故。日常で使っている道路がいきなり崩壊したら……と考えると恐ろしいが、その基準を示すデータが今年8月に国土交通省から初めて公表されており、今回の陥没事故を受け波紋も広がっている。
葛飾大橋、青山学院前歩道橋、品川駅前歩道橋など多くの場所が損傷ありと判定
今月2日に東京都武蔵野市吉祥寺で起こった道路の陥没事故。日常で使っている道路がいきなり崩壊したら……と考えると恐ろしいが、その基準を示すデータが今年8月に国土交通省から初めて公表されており、今回の陥没事故を受け波紋も広がっている。
データの名称は「全国道路構造物情報マップ ~損傷マップ~」。国交省のホームページでは、国民に「社会資本の現状や課題等について知って頂き、その維持管理・更新について、国民の皆様からの支持・支援を得るため」と作成の意図を説明している。
マップによると、都内では国道298号が通る葛飾区の「葛飾大橋」、国道4号線が通る千代田区の「和泉橋」、伊豆大島の「湯の浜橋」の3つの橋梁のほか、江東区の「亀戸駅前歩道橋」、江戸川区の「宇喜田歩道橋」など4つの歩道橋が緊急措置が必要な最高危険度「Ⅳ」に判定されている。対策状況ではこのうち「葛飾大橋」と「湯の浜橋」が「措置未着手」となっている。
早期措置が望ましい危険度「Ⅲ」となると、東京ドームへと続く「後楽橋」、「等々力陸橋」、「青山学院前歩道橋」、「品川駅前歩道橋」など、都内の一等地も含め橋梁501件、歩道橋225件にも上るから驚きだ。対策状況も橋梁で252件、歩道橋で192件が「措置未着手」のままとなっている。
普段日常的に使っている橋や歩道橋が突如として崩落する可能性はあるのか。国交省道路局国道・技術課道路メンテナンス企画室の担当者は「結論から申し上げますと、ただちに危険というわけではありません」と説明する。
「対策状況の措置とは本格的な改修工事のことで、『措置未着手』の箇所でも一時的な補修工事はしています。仮に補修工事ができていない場合には、通行止めや荷重制限などの対応を取っています。橋梁や歩道橋などの道路構造物は5年に一度の点検が定められていて、危険度『Ⅲ』は次回点検までの改修工事が目標。つまり、少なくとも向こう5年は大丈夫ということ。なかには5年に一度の点検実施日とのタイムラグから、改修工事が終わっていても『措置未着手』のままとなっているところもあります」(国交省担当者)
とはいえ、これほど多くの箇所が「措置未着手」のままとなっているのはなぜなのか。
「さまざまなケースがありますが、一般的には財源の問題。地方では職員のマンパワーが足りてないということもあります。あまり使われていない橋や歩道橋ですと、新たに予算をかけて回収するより撤去してしまった方がいい場合もあるが、地元住民の方の意見を聞いていて撤去まで時間がかかる例もある。今回、全国の事業者からは損傷状況というネガティブなデータを出すことに大きな抵抗もありましたが、国民の皆さまへの透明性のために公表した。損傷状況も含めてご理解いただきつつ、過度に不安視することなくご利用いただければと思います」(同)
吉祥寺の陥没で明らかになった、日常に潜む崩落事故の危険。用心するに越したことはないが、データに神経質になりすぎることなく、冷静な行動を心がけたい。