小田急線、各車両に耐刃手袋と盾を配備へ 8月の刺傷事件受け防犯対策強化
京王線の車内で起きた刃傷火災事件を受け、鉄道会社の安全対策が改めてクローズアップされている。移動中の密室空間の中で、予期せぬ出来事が発生した場合、乗客を守るためにどのような対応を取ればいいのか。国交省が対策強化に乗り出す中、鉄道会社は防犯に力を入れている。8月に車内で10人が負傷する事件が起きた小田急電鉄に対応策を聞いた。
京王線の事件に「あってはならないこと」
京王線の車内で起きた刃傷火災事件を受け、鉄道会社の安全対策が改めてクローズアップされている。移動中の密室空間の中で、予期せぬ出来事が発生した場合、乗客を守るためにどのような対応を取ればいいのか。国交省が対策強化に乗り出す中、鉄道会社は防犯に力を入れている。8月に車内で10人が負傷する事件が起きた小田急電鉄に対応策を聞いた。
小田急線では8月6日に快速急行の中で男が刃物を振り回し、10人が負傷する事件が起きた。犯人は床にサラダ油をまいて、車両ごと炎上させようとしており、報道によると京王線の事件で逮捕された服部恭太容疑者は、小田急線の事件を参考にしたと供述している。
小田急線にとっても再び衝撃が走った形だ。同社広報は取材に「当社線でも(事件は)ありましたので、痛ましい事案が続いていて、あってはならないことだと考えています。国のほうでも対策を定められたりというのがありますので、小田急電鉄として安全安心なご利用をいただけるよう努めていきたい」と話した。
8月の事件後、再発防止を掲げ、安全対策の強化に着手している。
9月17日には新宿警察署と合同で新宿駅で訓練を行った。車内で不審な人物が暴れた電車が新宿駅に到着したという想定で、通報から改札付近で警察官が犯人役を取り押さえるまでの流れを確認した。
さらに、実用的な準備も進めている。「乗務員室に刃物を通さない耐刃手袋を手配中なのと、盾を乗務員室に置く手配をしています」(同)。万が一の事態に備え、防御力の高いアイテムを各車両に配備する。乗務員室は運転士や車掌が利用。「会社として(犯人などに)立ち向かっていけというメッセージを従業員に出すことはない」と前置きしつつ、抑止力や安心材料の1つとしての効果を期待している。
防刃装備について「車両に乗っていることで何か役に立つことがあるんじゃないか。我々としては何もせず手をこまねいているわけじゃなくて、できることを着実にやっていこうということで、まずは手袋と盾を乗務員室に置くことにしたという考え方です」と説明した。
7月から乗客への手荷物検査が可能になった。刃物の持ち込みを防ぐなら、金属探知機検査の導入が早いかもしれないが、鉄道ならではの事情もある。
「鉄道の交通形態の特性というのでしょうか。たとえば、空と比べると、利便性が高いサービスを求められている認識がございます。あと電車の利便性を高める要因に、相互乗り入れがあると思うので、各社がおのおの考えることというより、業界全体で考えていく事案なんだろうなと当社では考えております」と、指摘した。
社員による駅や車内の巡回強化、警察とのさらなる連携強化など、重大事件の未然防止、被害を最小限に抑える努力は日々継続中。小田急は各鉄道会社とも協力し、車内事件の根絶を目指していく。