京王線刺傷で注目の「非常用ドアコック」 使用法を積極的にアナウンスしない理由とは
10月31日夜に東京都内を走行中の京王線の電車内で、刃物を持った男が乗客を襲い車両に火をつけ、17人が負傷した事件。SNSや報道では乗客が停車した電車の窓から逃げる様子が報じられたが、こういった有事の際、乗客はどのような行動を取るべきなのか。
非常用ドアコックの使い方は乗客へアナウンスされていないのが現状
10月31日夜に東京都内を走行中の京王線の電車内で、刃物を持った男が乗客を襲い車両に火をつけ、17人が負傷した事件。SNSや報道では乗客が停車した電車の窓から逃げる様子が報じられたが、こういった有事の際、乗客はどのような行動を取るべきなのか。
日本民営鉄道協会の担当者は「鉄道会社や車両ごとに仕様やマニュアルが異なり、一概に統一見解は申し上げられない」。今回の事件が起こった京王電鉄の広報部担当者は「まずは非常停止ボタン、緊急停止ボタンを押してほしい」としつつ、その後の行動については「すべてがケースバイケースなんです」と慎重に言葉を選ぶ。
「電車の車両にはドアの上に非常用ドアコックというものが設置されていて、これを操作するとドアにかかる圧力が減り、手動で開閉できるようになります。ドアごとドアコックの他、車両のすべてのドアを手動に切り替えるスイッチもあります。今回、機転を利かせたお客さまが操作したように、操作自体はけっして難しいものではなく、ふたを開けてレバーを引くだけという簡単なもの。ただ、基本的には乗組員が扱うことになっており、お客様へは積極的にアナウンスしていないのが現状です」(京王電鉄の担当者)
非常用ドアコックが操作された時点で電車はそれ以上の加速ができなくなるものの、運転席に信号が届くのはあくまでドアが開いた段階。急ブレーキの反動などで予期せずドアが開き、乗客が投げ出されてしまう危険性もあるという。過去には停車した電車から外に出て別の電車にはねられるというケースも起こっている。電車が落下の危険性のある高架上で停車することも多く、むやみに車外へ出る行為にはかなりのリスクが伴う。
「緊急停車した際に『車外へ出ないでください』とアナウンスをすることはあっても、『非常用ドアコックを操作して避難してください』とアナウンスするマニュアルはどこの鉄道会社にもないのでは。今後、検証検討すべき課題だと思います」(同上)
鬼気迫る状況から身を守るにはどんな行動が最適なのか。鉄道会社にも利用者にも、冷静で柔軟な対応が求められることになりそうだ。