なぜ鉄道車内での悲劇は繰り返されるのか 対策強化も“利便性重視”のジレンマ

10月31日夜に東京都内を走行中の京王線の電車内で乗客が刃物で襲撃され、放火された事件。8月には小田急線車内での刺傷事件も発生しており、鉄道における体感治安の悪化は否めない。改めて公共交通機関でのリスクが浮き彫りになった。

公共交通機関でのリスクが改めて浮き彫りになった(写真はイメージ)【写真:写真AC】
公共交通機関でのリスクが改めて浮き彫りになった(写真はイメージ)【写真:写真AC】

近年では新幹線でも殺傷事件 国交省は9月にセキュリティー対策を発表したばかり

 10月31日夜に東京都内を走行中の京王線の電車内で乗客が刃物で襲撃され、放火された事件。8月には小田急線車内での刺傷事件も発生しており、鉄道における体感治安の悪化は否めない。改めて公共交通機関でのリスクが浮き彫りになった。

 鉄道での事件を巡っては、1995年に地下鉄サリン事件が発生。2015年に、神奈川県内を走行中だった東海道新幹線の車内で男が焼身自殺し、乗客1人が巻き添えになって死亡、他の乗客らが重軽傷を負った。18年には、神奈川県内を走っていた東海道新幹線の車内で男が乗客3人を刃物で切りつけて1人が死亡する事件も起きた。

 今年8月6日には都内を走っていた小田急線の車内で男が牛刀を振り回すなどして乗客10人が重軽傷を負う事件も発生している。

 小田急線での事件を受け、国土交通省では鉄道のセキュリティー対策を9月24日に発表したばかりだ。JR、大手民鉄などの鉄道事業者と意見交換を行い、安全対策を取りまとめたというもの。

 国交省の資料によると、駅係員や警備員による駅構内の巡回・車内の警戒添乗などの実施、車内や駅構内の防犯カメラの増備などを行う「警備の強化」。また、「被害回避・軽減対策」として、AIを含む最新技術を活用した不審者や不審物の検知機能の高度化や、事件発生時に現場対応力を向上させるための担当者の教育・訓練、マニュアルの見直しなどを挙げている。「順次実施」との方針を示している。

 誰もが利用できる鉄道は安全性とともに、利便性の向上も重要視されている。所持品の確認や金属探知機導入などの検査の厳格化などが議論を呼びそうで、“安全と便利”の両立は難しさを抱えている。さらなる安全対策が求められるが、運営側にとって頭が痛い問題だ。

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