「おかえりモネ」宇田川さん姿見せない設定理由 NHK「外に出られない人も尊重すべき」
NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」が見る人を優しい空気に包みながら29日に本編の放送を終えた。気象予報士となって、東日本大震災で被災した古里の役に立ちたいと頑張る主人公・永浦百音(清原果耶)の思いもそうだが、百音を取り巻く周りの人々の心の温もりが作品全体を彩っていた。最後まで劇中1度も姿を見せなかった宇田川さんもその一人。ただ、なぜ姿を見せない設定にしたのか。
悪人の“登場なし” 百音や菅波ら登場人物の優しさに包まれた朝ドラ
NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」が見る人を優しい空気に包みながら29日に本編の放送を終えた。気象予報士となって、東日本大震災で被災した古里の役に立ちたいと頑張る主人公・永浦百音(清原果耶)の思いもそうだが、百音を取り巻く周りの人々の心の温もりが作品全体を彩っていた。最後まで劇中1度も姿を見せなかった宇田川さんもその一人。ただ、なぜ姿を見せない設定にしたのか。
宇田川さんは、東京編で百音が下宿した汐見湯に住む男性で、大家の菜津(マイコ)の祖父母が昔、世話になった人の孫。菜津によると、いい人で、もともと、きちんとした人だが、部屋から出てこないという人物。夜中に住人が寝ている間に風呂の掃除をして、劇中は掃除の音だけが聞こえていた。9月8日放送の第83話では、菜津が宇田川さんについて紹介。急に混乱したり、ドキドキすることがあって外に出られないと説明していた。ちゃんとした会社に就職したものの体調を崩して仕事を休み、復帰できないまま誰とも会えなくなっていた人物として描かれた。
宇田川さんは姿を見せないが、台風接近の際は、いつの間にか菜津の祖父母の荷物を安全な2階に運んでいたり、達筆で百音の誕生日会には「永浦百音さん21才お誕生日おめでとう」と書いて祝福。百音が故郷に帰る際には絵をプレゼントした。姿は見せないが、優しい思いと気遣いがしっかりと伝わった。
姿を見せない宇田川さんの設定について取材すると、NHKの制作統括・須崎岳氏が説明してくれた。「宇田川さんを映像上で実際に登場させるか、演ずるならどんな人が良いかという点については、第二部・東京編の構想段階から脚本家の安達奈緒子さんや制作演出陣で話し合いを重ねて来ましたが、やがて『宇田川さんは最後まで姿を見せない方が良いのでは』という方向性に定まっていきました。かつての新次(浅野忠信)が『俺は立ち直らない』と言っていたように、今はじっと動けず外の世界へ出られない人だっている。そのことは決して否定されることでなく、ちゃんと尊重すべきではと考えたのです。放送が進んでいくうちに、視聴者さんからも『宇田川さんはこのまま登場しないのかも。でもそれでいいような気がしてきた』といったご意見をいただくようになり、ちゃんと伝わっていることが大変うれしかったです。ご覧くださった方それぞれの胸の中に、宇田川さんは確かにいる。菜津がモネと莉子(今田美桜)に伝えた『そこにいてくれるだけでいいじゃない』というせりふには、そんな思いも込められています」。
もう一つ、この作品で特徴的だったことを挙げると、初回から最終回まで1人も悪人が登場しなかったことだ。登場人物たちの優しさとまっすぐに前を向く姿に、視聴者の朝は、登米や気仙沼の景色の効果もあって、爽やかで、穏やかだったに違いない。