日本プロレス史に脈々と流れる“ライバル物語” 3冠王座めぐる新たなバトルが熱い【連載vol.65】

「最高ですか?」とファンをあおる宮原健斗【写真:柴田惣一】
「最高ですか?」とファンをあおる宮原健斗【写真:柴田惣一】

かつてのスターたちにも必ずいたライバルの存在

 日本プロレス史を飾ってきたスター選手も、ライバルの存在が大きかった。

 力道山亡き後、プロレス界をけん引したBIことジャイアント馬場とアントニオ猪木。鳴り物入りで入団した元巨人軍・馬場への反骨心が、猪木の闘魂に火をつけた。名勝負数え唄と言われた藤波辰爾と長州力も、長州の藤波へのジェラシーが名勝負の原動力だった。初代タイガーマスクにはライバルが数多く出現した。ダイナマイト・キッド、ブラック・タイガー。そして「虎ハンター」と言われた小林邦昭がいたからこそ爆発的な人気になった。

 鶴龍対決ことジャンボ鶴田と天龍源一郎。武藤敬司、橋本真也、蝶野正洋の闘魂三銃士、三沢光晴、川田利明、田上明、小橋建太の四天王、棚橋弘至と中邑真輔……競い合い、しのぎを削りあう選手がいて、成長できる。

 プロレスは1人ではできない。「あいつには絶対負けたくない」と、お互い切磋琢磨して強くなる。心技体は全部必要だが、心を鍛えるのが一番難しいかも知れない。

 ライバル心はある意味、嫉妬心でもある。喜怒哀楽…その他、人生にはさまざまな機微があるが、人間の感情の中で一番、消えないのは嫉妬だという。

 折れそうになる心、くじけそうになった時「あいつに負けてたまるか」というライバル心が自分を奮い立たせ、そして強くする。ライバルは必要だ。

 あなたはどのライバル対決が印象深いだろうか。もしかすると、その時の自分の境遇に重ねて応援していたのかも知れない。

「永遠のライバル」……強さと、どこか切なさもある言葉が胸に刺さる秋の夜。空を見上げれば、数々のライバルストーリーが浮かんでは消える。(文中敬称略)

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