「北の家族」ヒロイン、伝説の女優が38年ぶりメガホン「本当は映画をやりたかったです」

映画「旅の重さ」「サンダカン八番娼館 望郷」やNHK 連続テレビ小説「北の家族」のヒロイン役で知られる高橋洋子(68)が、映画「キッド哀ラック」(10月9日公開)で38年ぶりに監督・脚本・主演をこなした。伝説の映画女優が、スクリーン復帰を導いた佐々部清監督、かつて共演した渥美清さん、田中絹代さんとの思いを語った。

映画「キッド哀ラック」で38年ぶりにメガホンを取った高橋洋子【写真:ENCOUNT編集部】
映画「キッド哀ラック」で38年ぶりにメガホンを取った高橋洋子【写真:ENCOUNT編集部】

高橋洋子インタビュー、かつて共演した渥美清さん、田中絹代さんとの思い出語る

 映画「旅の重さ」「サンダカン八番娼館 望郷」やNHK 連続テレビ小説「北の家族」のヒロイン役で知られる高橋洋子(68)が、映画「キッド哀ラック」(10月9日公開)で38年ぶりに監督・脚本・主演をこなした。伝説の映画女優が、スクリーン復帰を導いた佐々部清監督、かつて共演した渥美清さん、田中絹代さんとの思い出を語った。(取材・文=平辻哲也)

 高橋は1970年代に熊井啓、神代辰巳、深作欣二、市川崑ら数々の巨匠の作品に出演。81年には小説「雨が好き」で作家デビューし、中央公論新人賞を受賞。82年には小説「通りゃんせ」が芥川賞候補に。83年には「雨が好き」を原作に脚本・監督・主演の3役をこなすなどマルチな活躍を見せてきた。しばらく映画界から遠ざかっていたが、故・佐々部清監督の「八重子のハミング」では認知症を患う妻役でスクリーンにカムバックした。

「キッド哀ラック」は東京で夢に破れたヒロイン(高橋)が故郷で姉(新井晴み)と再会し、前に進んでいこうとする姿を描く約30分の短編だ。そのきっかけは2020年3月の佐々部監督の訃報だった。

「キャメラマンの早坂伸さんから連絡があって、話をしているうちに、当時、一緒にやっていた学生映画のキャメラをやってくれることになったんです。早坂さんはスタッフも集めてくれ、これでいけると思ったら、学生監督が『自信がない』と降りることになって、自分で本を書くことにしたんです」。

 佐々部監督との出会いは2015年。佐々部監督が中心となった「下関 海峡映画祭」に招待された。「監督は私のデビュー作『旅の重さ』のファンだったそうです。好きな映画の趣味も合って、意気投合する中、オファーをいただきました。まだまだいけるって思ってくれたんじゃないでしょうか。今回の映画には『八重子のハミング』のスタッフが集まってくれ、佐々部監督が撮らせてくれたように思えます」。

 監督デビュー作の「雨が好き」は製作時にトラブルもあり、「若気の至りです。覚悟が決まっていない人間が、20代の後半で生意気なことをしたと思っています」と振り返るが、本作はローバジェットの自主映画で自分が撮りたい作品になった。昨秋、情緒あふれる栃木市内で3泊4日のロケ。「撮影はスプリントレースのようなものでしたね。監督といっても、出ている方ですから、カチンコは助監督におまかせ。トラブルもなく、順調だったんですが、大変だったのはロケハン。舞台となる家がなかなか見つからず、鹿が道に出てくるような場所まで車を走らせて、見つけることができました」。

 映画では認知症になった母との確執も描かれる。「モデルは94歳になる母です。認知症ではありませんが、今は入院しています。私は長いこと親子関係に苦しんできた。若い時は、『撮影所に行くのに、ジーンズで行くのか』とかよく言われたものです。母娘には抗いたくとも抗えない愛情を抱えている。親のエゴでどこまで子どもを縛っていいのか、というのはずっと考えてきたテーマでした。娘はある時期に母親がイヤになるもの。老いては子に従ってほしいですよ」と苦笑いする。

次のページへ (2/3) 名女優・田中絹代からは「映画は映ってなんぼですからね」
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