カンヌ話題作で青年期の小野田少尉役、34歳俳優「大冒険」カンボジア撮影のウラ側

草むらで敵と退治する緊張感にあふれた場面カット【写真:(C)2021映画『ONODA』フィルム・パートナーズ(CHIPANGU、朝日新聞社、ロウタス)】
草むらで敵と退治する緊張感にあふれた場面カット【写真:(C)2021映画『ONODA』フィルム・パートナーズ(CHIPANGU、朝日新聞社、ロウタス)】

小野田少尉の父親役・諏訪敦彦からは「小野田さんの役がぴったりだね」

 遠藤が演じる青年期は3人の兵士(松浦祐也、カトウシンスケ、井之脇海)とともに敵と対峙し、戦後は村の警備兵とも銃撃戦を繰り広げることになるが、クランクイン初日に撮影した父親とのシーンが心の羅針盤になった。父親役はカンヌ国際映画祭などの出品歴もある映画監督、諏訪敦彦だった。

「諏訪さんが『小野田さんの役がぴったりだね』とおっしゃってくださったんです。自分にとって、すごく重みのある深い言葉で、僕がこの役をやっていいんだという自信になりました。その言葉を支えにして最後まで引っ張っていくことができました。ただ、諏訪さんがどういう意味でおっしゃったのか、聞くのも野暮だなと思って、聞けずじまい。いまだに真意は分からないのですが……(笑)」

 時代も背景も違う小野田さんだが、自身との共通点はあったのか。「僕も1度決めたら、まっすぐ突き進んでしまうタイプではあるので、そういった意味では、近いのかも知れない。この映画の小野田さんは監督の創作もあって、実際とは違う部分もあるんですが、すごく人間味にあふれた人物だなと思いました。航空隊に入りたいけど、高所恐怖症でなれなかった。父親から『捕虜になったら、おじいちゃんの形見の小刀で腹を切れ』といわれたことだって、複雑な気持ちになると思います。いろんなコンプレックスがあった上で、自分は特別な兵士だと思っていた。それが小野田さんの強さでもあるし、それが崩れてしまったら、虚無になってしまうというおびえもあったと思います」。

 撮影はほぼ順撮りで、クランクアップは成年期を演じる津田寛治のクランクインの日だった。「小野田と小塚が海辺で『お互いに会えてよかった』と語り合うシーンで、津田さんが海辺にいるというシーンでした。津田さんにご挨拶する時は僕も感極まって涙が出ました。津田さんも『2人はいい経験をして、本当にかけがえのない何か作品にしようっていう気持ちが伝わってきたよ』とおっしゃってくれ、うまくバトンが渡せたかな、と思いました。僕のパートは3人と過ごす時間もありましたが、津田さんは孤独な場面が多く、苦しかったと思います。でも、映画を見たら、本当に素晴らしく衝撃を受けました」。

 小5から俳優を続ける遠藤にとっても、本作は大きな作品にもなった。「コロナ禍でカンヌに行けなかったのは心残りですが、落ち着いたら、フランスにも行きたいなと思っています。小野田さんは孤独と闘いながら最後まで生き抜いた人ですが、僕のパートは人がいたからこそ成立したと思うので、人は一人では生きていけないと強く思いました。これからも、チームで素晴らしい映画を作れるように精進していけたらと思っています」。遠藤は本作での人との出会いに深く感謝している。

□遠藤雄弥(えんどう・ゆうや)1987年3月20日、神奈川県出身。2000年に映画「ジュブナイル」でデビュー。近年の主な出演作に日本テレビ「ボイスⅡ 110緊急指令室」、KTV「青のSP」などがあり、主演映画「辰巳」(小路紘史監督)、映画「ハザードランプ」(榊英雄監督)の公開を控えている。

次のページへ (3/3) 【写真】約4か月の過酷な撮影…「ONODA 一万夜を越えて」の場面カット
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください