藤井3冠の強さが表れた1局 JT杯で見せた精度のブレない指し回し 真田圭一八段解説
藤井聡太3冠(王位、叡王、棋聖=19)が千田翔太七段(27)と戦う将棋日本シリーズ JTプロ公式戦の2回戦第4局が25日、「ABEMAスタジオ シャトーアメーバ」(東京・渋谷)で行われ、先手の藤井3冠が113手で勝利。準決勝進出を決めた。注目の1戦を振り返る。
羽生善治九段を破って勝ち上がった千田翔太七段と激突!
藤井聡太3冠(王位、叡王、棋聖=19)が千田翔太七段(27)と戦う将棋日本シリーズ JTプロ公式戦の2回戦第4局が25日、「ABEMAスタジオ シャトーアメーバ」(東京・渋谷)で行われ、先手の藤井3冠が113手で勝利。準決勝進出を決めた。注目の1戦を振り返る。
JT杯日本シリーズは特色のある棋戦だ。何よりの特徴は、超早指しであること。持ち時間は10分で、切れたら30秒の秒読み。1分の考慮時間が5回ある。先日まで藤井3冠が激闘を繰り広げたタイトル戦の番勝負と比べると、フルマラソンと100メートル走くらいの違いがある。
早指しの場合、才能ある若手の将棋は特に面白さが増す。じっくりと考える時間がないので、頼りになるのは直感力とセンス。また、際どい場面で怖くても踏み込むのか、安全第一なのか。棋風や性格も表れやすい。藤井3冠の場合、年齢的には若手でも実績は既に超一流。よって見所は、普段の正確無比な指し手を支える読みの量を削られる状況で、どういった指し回しをするのかにある。
対戦相手の千田七段は若手実力者。いち早くAIを搭載した将棋ソフトを研究に取り入れ“AI将棋の申し子”ともいわれ、早指しにも強い。本棋戦では前局で羽生善治九段(50)を負かしている。対藤井戦でも勝利の実績があり、好勝負を予感させる対戦だ。
さて、藤井3冠の先手で始まった本局は出だしこそ相掛かり模様だったが、17手目▲7七角、続く△3三角とお互いに珍しい角上がりの結果、角換わり腰掛け銀の定跡形に合流した。
その後、日本シリーズ独特の封じ手システムを挟み、その封じ手43手目▲8八玉と入城した直後、藤井3冠は総攻撃を開始する。目を引いたのが59手目▲6二角~63手目▲7三歩。やや細い攻めで、特に自陣にいる飛車と連動してないので切れ筋に陥る危険もある。受けも強い藤井3冠だが、中盤で互角からリードを奪う段階においてはこのように攻撃的な指し手もよく出る。やはり、リスクを負わずに局面を良くすることはできないという価値観があるのだろう。