“漫画家”矢部太郎が明かす変わった家族 カラテカへの思いも吐露「解散してません」

ネタの宝庫となった“たろうノート”や“お姉ちゃんノート”【写真:倉野武】
ネタの宝庫となった“たろうノート”や“お姉ちゃんノート”【写真:倉野武】

「カラテカ」というコンビへの思い「コンビは会社のものではない」

「小説新潮」で連載後、単行本化にあたり、みつのりさんから「お母さんのことも書いたら」のアドバイスを受けて「性格とか、僕がいまあるのはお母さんの存在が大きいから」とお母さんの話も書き下ろして加えた。みつのりさんからは「さっちゃん(母)も喜んでたよ」と言われた。

 そんな両親に育てられた日々を振り返り、「これも1つの幸せの形。それはお母さんが働いてくれていたからっていうのが大きいと思うんですけど、裕福じゃないし、人と比べると“ないもの”もあったけど、“あるもの”もいっぱいあって、それで足りていた。これ以上求めなくても十分だって感じ。その“あるもの”が何かは読んだ人にそれぞれ感じてもらえたら」と語る。

 また、「今はお父さんのような人が多いような気もするんですよね。僕の周り、芸人が多いからかな。いろんな暮らし方、それぞれ大切にしているものがあるみたいな。子育てや地方移住とか、仕事よりそういうものを大切にする人もいる。ただ、昔のお父さんほど、そういう生活を楽しいと思えるかどうか。昔はお金がなくても幸せって気持ちが持てたけど、今はそう思うことが難しいかもしれませんね」と時代と、父の偉大さ(?)に思いもはせた。

 その父が「太郎は大きくなって活躍しているけど、自分は変わってないなぁ」と漏らしたというように、矢部さんは着実に前へ進んでいる。この秋には、週刊「モーニング」(講談社)で漫画の新連載「楽屋のトナくん」をスタート。動物園の楽屋で動物たちが織り成す“動物模様”を描くギャグ漫画だ。「当面はこれを続けます。お笑いもどんどん劇場に出させていただけるよう頑張りたい。漫画もお笑いも大きな目標はありませんが、ひとつひとつできたらなと思います」。

 お笑いといえば、高校の同級生でコンビ「カラテカ」の相方・入江慎也さんが事務所を退所して2年。入江さんはその後事業を立ち上げ、順調のようだが、「カラテカは解散していません。入江は会社(事務所)を辞めても、コンビは会社のものではないので。たまに連絡とってご飯食べたり近況報告しあったりしてます。まだこの本についての感想は聞いてないですけど、お父さんのことも知っているので、面白く読んでくれると思います」と話した。

 そして、「変わらない」というみつのりさんは来年80歳になるが、今も絵本や紙芝居を描いているという。「大家さんの漫画が出たころ、父にも僕の子ども時代のことを本に書いてほしいという依頼があって、もう4、5年たちますが、まだ何も出てませんからね(笑)。その資料やラフとかは段ボール箱いっぱいあったので何か書いてはいると思いますが……」

 確かに、お父さんのマイペースは健在だ。

□矢部太郎(やべ・たろう)1977年、東京都生まれ。東京学芸大中退。97年、お笑いコンビ「カラテカ」を結成。「進ぬ!電波少年」などバラエティー出演のほか、俳優として舞台や映画でも活躍。「小説新潮」に連載し、2017年に刊行した漫画「大家さんと僕」で漫画家デビュー、同作品で手塚治虫文化賞短編賞受賞。他の著書に「大家さんと僕 これから」「『大家さんと僕』と僕』がある。

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