古田新太が目指した“何もしない”俳優、7年ぶり主演で見せたモンスター父親役のすごみ
「劇団☆新感線」の看板役者で、舞台、映画、ドラマで幅広く活躍する古田新太(55)が映画「空白」(9月23日公開、吉田恵輔監督)で7年ぶりに映画主演した。漁師の父親が、万引きの疑いをかけられ、事故死した中学生の娘の無実を証明しようと、店長(松坂桃李)を激しく追及するヒューマンサスペンス。「ただ立っている演技がすごかった」との吉田監督の絶賛に、古田は「何もしないことを心がけている」と明かす。その理由とは……。
映画「空白」吉田監督「立っているシーンがまがまがしい」、古田「何もしないことを心がけている」
「劇団☆新感線」の看板役者で、舞台、映画、ドラマで幅広く活躍する古田新太(55)が映画「空白」(9月23日公開、吉田恵輔監督)で7年ぶりに映画主演した。漁師の父親が、万引きの疑いをかけられ、事故死した中学生の娘の無実を証明しようと、店長(松坂桃李)を激しく追及するヒューマンサスペンス。「ただ立っている演技がすごかった」との吉田監督の絶賛に、古田は「何もしないことを心がけている」と明かす。その理由とは……。(取材・文=平辻哲也)
「空白」は娘にまったくの無関心だった漁師の男・添田充(古田)が、娘を死に追いやったスーパーの店長を執拗(しつよう)に追い込んでいく物語。モンスターと化す暴走ぶりは思わずひいてしまうほどの迫力だが、ラストには感動も用意されている。「ヒメアノ~ル」「BLUE/ブルー」などで知られる吉田監督は韓国の名優ソン・ガンホをイメージし、色気を感じる古田に白羽の矢を立てた。
古田にとっては14年公開の「台風一家」以来、7年ぶりの映画主演。大好きな野球にたとえ、その違いを説明する。「主役も脇も役者的にはそんなに変わらないです。ただ登板日数が多くなるということくらい。後は興行(ヒット)のことを考えてしまいます。客が入らなかったら、監督のせいというのはあるけど(笑)、『オイラと松坂桃李のせいじゃん』みたいなことになるので、それを気にします。脇役のときはもっともっと気楽ですよ」。
劇中、主人公は終始、不機嫌。松坂だけではなく、いろんな相手に感情を激しく爆発させる。役とはいえ、演じることはしんどくはないのか。「映画は瞬間湯沸かし器じゃないとダメだと思うんです。120%を出さないといけない。抜いて落とすような球はダメ。自分の速球が145キロだったら、145キロで投げないと。どうせ150キロは出ないんだからという気持ちはあります。舞台は100%に見えるような80%でやるんです。毎日、先発しているようなものだし、明日も同じことをしないといけないから」。
吉田監督作品の特徴の一つである笑いを封印したシリアスな内容だが、現場は和やかな雰囲気だった。「お昼寝休憩があるほどで、古田さんは遺体に対面し、泣き崩れ、家に帰って、その後、取調室のシーンを撮り終わって出番がなくなったら、『昼から飲めるところって、あるんだっけ』というわけです」と吉田監督と明かす。
古田も「毎日、松坂桃李を怒鳴りつけて、(スーパー店員役の)寺島しのぶとけんかして、(元妻役の田畑)智子につらく当たるみたいな現場でしたが、映画はカットかかるし、連続ドラマよりは休憩もあるので、リリーフを何回もしている感じ。とりあえずキャッチャーである桃李を相手に、審判である監督に『ストライク』と言わせたいがために投げ込んでいるけど、3回くらい休みがあるから、その度に、アイシングするという感じでしたね」と振り返る。