くも膜下出血は「40~65歳の男女に起きやすい」 予防法や兆候を専門家が解説
くも膜下出血の発作で6人が死傷――。今月11日に東京・九段で起きたタクシーの暴走事故は悲劇的だった。くも膜下出血とはどんな病気なのか、発作を避ける手立てはあるのか。原因や予防法を医師に聞いた。
くも膜下出血は40~65歳の男女に起きやすい
くも膜下出血の発作で6人が死傷――。今月11日に東京・九段で起きたタクシーの暴走事故は悲劇的だった。くも膜下出血とはどんな病気なのか、発作を避ける手立てはあるのか。原因や予防法を医師に聞いた。
事故の顛末(てんまつ)はこうだ。64歳の運転手が乗ったクルマが赤信号で停車。青になっても動かないため後続車両がクラクションを鳴らしたら発進し、自転車2台とタクシー待ちの女性2人を次々とはねた。クルマは信号の約120メートル先の街路樹に衝突して停止。現場にブレーキ痕はなかった。
この事故でタクシー待ちの73歳の女性が死亡。タクシーの乗客含めた5人が重軽症を負い、運転手も死亡した。
運転手の母親は息子について「持病はなく、大きな事故を起こしたこともなかった」と説明したが、後日、運転手の死因はくも膜下出血の発作だったことが明らかになった。
病気の発作によって人命を奪ってしまい、運転していた当人まで死亡するとはまことに不幸な結末。くも膜下出血の恐ろしさを改めて思い知らされた人もいるだろう。
どんな病気なのか。
医学博士の米山公啓氏は「40~65歳の男女に起きやすい」としてこう解説する。
「くも膜下出血は脳の表面を覆う膜のひとつであるくも膜の下にある動脈が破れる状態を言います。ほとんどが脳の血管が膨らむ瘤状の脳動脈瘤が破裂して発生する。発症した人の多くが頭をバットで殴られたような激烈な痛みを覚え、頭痛や吐き気に襲われたり、意識を失ったりします」
今回の事故ではタクシーのドライブレコーダーに、意識がもうろうとした状態の運転手が映っていたという。激痛と意識障害で正常な運転ができる状態ではなかったと思われる。客を乗せていたため、乗客に迷惑をかけまいとして走り続けたのではないかという見方もある。
くも膜下出血は脳出血、脳梗塞と並ぶ脳卒中のひとつ。3分の1が死亡し、3分の1に後遺症が残り、社会復帰できるのはわずか3人に1人である。24時間以内に再出血を起こす可能性が高く、その場合の生存率は約50%といわれているから恐ろしい。テレビドラマや映画などではこの病気に襲われた人がいきなり頭を抱え、激痛に身をよじらせて大声で叫ぶシーンを見かける。