水谷八重子、1年8か月ぶりの新派公演「コロナを忘れていただけるような舞台ができたら」
「劇団新派」の女優・水谷八重子、波乃久里子、俳優の喜多村緑郎、河合雪之丞らが9日、都内で行われた「花柳章太郎 追悼『十月新派特別公演』」(10月2日初日、新橋演舞場)の取材会に登場した。
花柳章太郎追悼公演「花柳先生に『いい子だね』と言っていただける芝居ができれば」
「劇団新派」の女優・水谷八重子、波乃久里子、俳優の喜多村緑郎、河合雪之丞らが9日、都内で行われた「花柳章太郎 追悼『十月新派特別公演』」(10月2日初日、新橋演舞場)の取材会に登場した。
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新派は明治時代に始まった日本の演劇の一派。歌舞伎とは異なる当時の新たな現代劇として発展し、「旧派」の歌舞伎に対して「新派」と呼ばれている。今作は新派を代表する女形役者で、1965年に亡くなった花柳章太郎さんの追悼公演。大正から昭和にかけて活躍した章太郎さんにゆかりのある名作「小梅と一重(こうめとひとえ)」「太夫(こったい)さん」の2本を新橋演舞場で上演する。
「小梅と一重」では一重役を水谷、芸者の小梅役を河合、人気役者の澤村銀之助を喜多村が演じる。「太夫さん」では波乃が、身売り娘を太夫に育てるおえい役を務める。また今作は、昨年2月に新型コロナウイルス感染拡大により中止となった新橋演舞場での「八つ墓村」以来、1年8か月ぶりの公演となる。
水谷は「(昨年2月に)新橋演舞場の舞台の上からコロナに追い出されまして、やっと戻ることができる。こんなにうれしいことはありません」と喜び。「(コロナは)まだまだ安心できない。そんな中でほんの瞬間、コロナを忘れていただけるような舞台をお見せすることができたら。そして花柳先生に『いい子だね』と言っていただけるような芝居ができればと思っております」と語った。
舞台への意気込みを聞かれると、「意気込みなんてものはありません。ただただ怖いばかりで、無事に務められればと思っております。あの演舞場の舞台にもう1回立つことが、いまだに想像もつかないくらい、(舞台から)離れてしまった。うれしいのか悲しいのか、怖いのか恐ろしいのか、いろんな気持ちが入り交じっています」と複雑な胸中を吐露。「なんてお答えしたらいいのか。いつも結構うまく答えるわたくしなんですけど、答えようがない。コロナのせいと思ってください」と報道陣を笑わせた。
波乃は久々の公演を前に、「1年8か月ぶりの演舞場の出演。こんなにうれしいことはございません。客席の皆様も(コロナの影響で)命がけで来て下さると思う。私たちも命がけで舞台をお見せしないといけない」と語った。河合は「花柳先生の生の舞台を拝見したことはない」としながらも、「映像からでも素晴らしさが伝わってくる女形で、大尊敬している大先輩。この花柳先生の追悼公演で新橋演舞場の舞台に出せていただくのはありがたいこと」と身を引き締めた。
2代目市川月乃助として歌舞伎俳優経験もある喜多村は、自身が出演する「小梅と一重」について、「歌舞伎の様式美と新派のリアルな演技が重なって、本当におしゃれな見事な作品。新派の情緒がいっぱい詰まっていて、各役が非常に際立っています」と解説。もともと女形の澤村役を「はんなりとした2枚目の立役」という設定に変えたといい、「若い青年の俳優を必死に務めたいと思います」と意気込んだ。水谷は取材会の最後に、「わたしたち、PCR検査を済ませてキレイにお待ちしています!」をアピールした。
同作には昭和の喜劇王・藤山寛美さんの娘の藤山直美も出演。花柳章太郎さんが「藤山寛美」の芸名を命名した縁がある。