【週末は女子プロレス♯14】「引退しなくてよかった」waveに君臨・野崎渚に漂う王者の風格 この1年に何が起きたのか
別人ように変身 何が野崎を変えたのか
結局、ブランクは4年半にも及んだ。17年8月12日、野崎は宮崎が所属するwaveのリングへ。その後、専属フリー契約を結び、19年4月1日付けで正式にwave所属選手となった。とはいえ、復帰戦で肩の痛みが出ればすぐに引退の可能性もあったという。その場合、復帰戦の次の試合が引退試合とする覚悟さえしていたという。復帰早々引退の危機と隣り合わせだったわけだが、幸い、肩の痛みは感じなかった。試合勘を取り戻しながら再発の恐怖とも闘っていくなかで、テーピングする必要も少なくなってきたという。ブランク中に行っていたリハビリが功を奏したのではないかと、野崎は分析している。
そして19年12月29日、Marvelous彩羽匠に渡っていたシングル王座をwave最後の砦として野崎が団体に奪回。自身初のシングル王座戴冠で、waveの危機を見事に救ってみせたのだ。以来、予想以上の内容で野崎はベルトを守り続けた。団体は新型コロナウイルス禍で苦戦を強いられるも、リング上では“エース野崎”の空気ができあがった。2020年、1年間にわたり団体をけん引してきたのが野崎だったことは疑いようがない。ケガに泣かされた過去とはまったくの別人。この1年間で、いったい何が変わったのだろう?
「前からなかったわけじゃないけど、とにかく自信がついたというか、もっと強くありたいと思えるようになったし、もっと強くならなきゃと意欲が出てきましたね。強くなったと自覚もしているし、ベルトによって強くなれた1年だったなと思いますね」
しかしながら、20年12月27日の後楽園で旧姓・広田さくらに敗れ6度目の防衛に失敗。
桜花由美が初代王者時代に創り上げたV7の最多防衛記録には届かず、ベルトを手放した。
「レジーナの最多記録を塗り替えることが目標だったので、負けたときはホントに悔しかったですね」と野崎。しかしながら、新王者からは彼女が求めていた「強さ」とはまた別の王者像を見いだすこともできたという。
「私はホントに強さだけを求めていくベルトにしていこうと思ってやってきたけど、広田さんはサクパラダイスとかやってコミカルな部分も出してますよね。すごいなって素直に思ったし、すごく勉強になりました」
傍観者となっていた野崎に、突然のチャンスがやってくる。シングルリーグ戦Catch the WAVE優勝の高瀬みゆき(アクトレスガールズ)が左腕の負傷で欠場。本来なら高瀬がそのまま広田のベルトに挑戦する予定だったが、このアクシデントにより急きょ次期挑戦者決定戦が行われ、米山香織を破った野崎に権利が転がり込んだのだ。