トロフィーもリングも各団体らしさがさく裂 プロレスの楽しみ方はいろいろあります
全日本プロレス「第8回 王道トーナメント」は、新型コロナからの復活を果たした諏訪魔が制覇し、金色に光り輝く優勝トロフィーを獲得した。PWF会長ドリー・ファンク・ジュニアの代理人・大隅良雄氏が、諏訪魔に大トロフィーを手渡したが、一瞬ぐらついていた。「重い」という代理人の思いが伝わってきたが、その気持ちは、よく分かる。
持ち上げるのも大変な勝利者トロフィー 過去には“サボテン”も
全日本プロレス「第8回 王道トーナメント」は、新型コロナからの復活を果たした諏訪魔が制覇し、金色に光り輝く優勝トロフィーを獲得した。PWF会長ドリー・ファンク・ジュニアの代理人・大隅良雄氏が、諏訪魔に大トロフィーを手渡したが、一瞬ぐらついていた。「重い」という代理人の思いが伝わってきたが、その気持ちは、よく分かる。
かつて新日本プロレスのIWGP戦終了後や、全日本プロレス、大日本プロレスなどのタイトル戦後に、勝利者トロフィーを贈呈していたが、とにかく重い。体が大きく、パワーみなぎるレスラーが手にするから、絵になるのであり、一般人にしてみれば持ち上げるのも大変。ふらつく様子に、若手選手が手伝ってくれたり、受け取る勝者が近寄ってきて助けてくれたものだ。
その際、勝者に思わず一言、かけることも多かった。棚橋弘至には「チャンピオン、ベルトもエースの称号も君のものだね」。オカダ・カズチカには「本物だ」。内藤哲也には「あのとき、話してくれた夢がかなったね」などと、声が出てしまった。
本当にうれしそうな笑顔、疲労困憊(こんぱい)なのにキラキラと輝く瞳。ホッとしたような安堵の吐息。汗なのか涙なのか分からない、おそらくその両方であろう、顔がびっしょり濡れているが誇らしげな表情。激闘を勝利で終えた王者の表情は、どれも素晴らしく印象的だった。
勝者といえども激闘直後とあって、大きなダメージを感じることもあり、プロレスラーへの尊敬の念が深まるばかりだった。
大日本プロレスでタッグ王座を奪取した関本大介、岡林裕二組の間に入ったときなど、両選手と一緒に手を上げると、というか、2人に持ち上げられたのだが、どう見ても「捕まった宇宙人」になってしまった。
そういえば、とんでもない勝利者トロフィーを贈ったこともあった。2010年5月4日、大日本プロレスの設立15周年記念興行としておこなわれた神奈川・横浜文化体育館大会で用意されたのは、サボテントロフィーだった。
高さ1メートルはあろうかというサボテンの鉢植え。無数にトゲが飛び出しており、気を付けないと刺さってしまう。かつてない勝利者賞。いや、最初で最後だろう。「日米デスマッチサミット 有刺鉄線条約」マッチの勝利者用で、大日プロ・登坂栄児社長と相談のうえのトロフィーだった。
果たして、勝利者チームにサボテントロフィーを手渡したが、試合直後の混乱の中、あっという間に破壊されてしまった。できれば、道場にいつまでも飾ってほしかった。今でもすこしばかり残念だ。
さまざまな団体のリングに上がる機会をいただいた。大きさ、固さ、ロープの高さ、太さ、張り具合など、各団体の個性が感じられた。「こんなに固いの」「意外とバウンドするな」「ロープが高い」などと新たな発見もあり、興味深かった。創設者の考えが反映されている場合が多い。その後、時代の移り変わりとともに、リング仕様も多少は変わっては来ているようだが、どのリングも神聖で、そこには闘いの神様がいるのではないかと思うことも多かった。
その上、リングには全方向360度からの視線が集中する。視線と同時にファンの熱い思いも感じられた。
選手の流した血と汗と涙がしみ込んだリング。「流した汗は報われる、流した涙の分だけ強くなれる」と言われるが、まさにその通りだ。
その四角いジャングルで、これからもたくさんの名勝負が生まれることだろう。次のタイトルマッチはどうなるのだろう? あの選手とあの選手が対戦したら? 希望と期待は無限大だ。