鬼軍曹は鬼だけじゃなかった 山本小鉄さんの仏ぶりを命日8月28日を前に振り返る

良き夫、良き父、そして良きおじいちゃんとしての顔

 トレードマークのスキンヘッドは、アメリカでの悪党修行時代、理容店で散髪を拒否され、仕方なく坊主にしたのが最初だ。「慣れれば楽」とカミソリでチャチャッと手際よくそる姿に驚いていたら「柴田さんもそる? それとも? フフフ」とちゃめっ気たっぷりに笑った。

 髪の毛の代わりに眉毛のお手入れに気を遣っていた。下から上に眉ブラシで整えていた。「この方が威厳が出るだろ」とニンマリ。愛妻家としても知られ、大変な子煩悩でもあった。「女房とは今でも手をつないで寝ているよ。娘が生まれて今日で1万何日、孫が生まれて今日で何日」など、良き夫、良き父、そして良きおじいちゃんであった。

 奥さんが学生時代に知り合って、その後、卒業するまで学費を小鉄さんが負担したそうだ。「女房になる人だからね、当たり前」と、こともなげに笑っていた。

 藤波辰爾が夫人にプロポーズしたのは小鉄さんの家の電話からだった。「好きなくせに何だかハッキリしないから、もどかしくてね。うちで酒飲ませて言わせたの。僕がキューピットかな、アハハ。でもそのときは結婚してくださいじゃなくて『3年間待ってください』って言っていたな。まあ、めでたくゴールインして良かった」。面倒見の良い小鉄さんであった。

 思い出は本当に尽きない。小鉄さん、プロレス界を厳しくも温かい目で、いつまでも見守ってください。

次のページへ (3/3) 【写真】若き日の山本小鉄さんの勇姿
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