“日本初”トンネル内の映画試写会に潜入取材「貫通石」の意味するものとは?

静かな冷気が漂うが、ほのかなぬくもりを感じる不思議な居心地だった。23日に行われ、主演の高杉真宙と岸井ゆきのが参加した映画「前田建設ファンタジー営業部」(31日公開、英勉監督)の試写会イベント。福島県いわき市の「広瀬1号トンネル」で実施された。映画の実際のロケ地となり、新規工事によって貫通した真新しいトンネルだ。主催者によると、トンネル内での映画試写会イベントは国内では初めてという。“前代未聞"のプロジェクトに関する実話を基にした映画さながらの“前人未踏"のトンネル試写会を振り返った

映画「前田建設ファンタジー営業部」トンネル試写会に参加した高杉真宙、岸井ゆきのら
映画「前田建設ファンタジー営業部」トンネル試写会に参加した高杉真宙、岸井ゆきのら

映画「前田建設ファンタジー営業部」試写会の開催地は福島県いわき市「広瀬1号トンネル」 “ずっとロマンを追い続けている人"の情熱とぬくもり感じた

 静かな冷気が漂うが、ほのかなぬくもりを感じる不思議な居心地だった。23日に行われ、主演の高杉真宙と岸井ゆきのが参加した映画「前田建設ファンタジー営業部」(31日公開、英勉監督)の試写会イベント。福島県いわき市の「広瀬1号トンネル」で実施された。映画の実際のロケ地となり、新規工事によって貫通した真新しいトンネルだ。主催者によると、トンネル内での映画試写会イベントは国内では初めてという。“前代未聞”のプロジェクトに関する実話を基にした映画さながらの“前人未踏”のトンネル試写会を振り返った。

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 本作は、アニメ「マジンガーZ」に登場する地下格納庫兼プールの建設設計に七転八倒しながらも本気で挑んだ、サラリーマンたちの実話をベースにした積算エンターテインメントだ。実際には作らないのだが、技術と知恵を駆使し、設計図を出して工期を立てて見積書を完成させるというプロジェクトを描いた。

 さて、今回の取材。地面に少しだけ雪が積もる福島県の山間、大きく口を開けたような広瀬1号トンネルの入り口には透明なビニールがかけられ、天井の白い照明灯が奥へ奥へと続いていた。取材パスを受け取って、ヘルメットを装着し、特設のステージへ。5分ほどの道のりだろうか、まだ舗装のされていない砂利の地面を歩いていく。

 通常トンネルには、どこか圧迫感・恐怖感を覚えるが、このトンネルは照明がかなり明るく、白壁はつるんとしている。近未来の基地のようなイメージだ。アスファルトが舗装される前のトンネルを歩くというのは、なんとも妙な感覚だ。前方に大型の画面が見えてきた。パイプ椅子が並べられ、あちらこちらにストーブが。鉄骨で組んだステージ。アットホームな雰囲気に包まれていた。

 映画のモデルとなった実在する「前田建設工業株式会社」の広瀬トンネル作業所長を務める賀川昌純さんによると、トンネルの全長は1403メートル。13・5か月の工期で貫通に至ったという。映画のロケは昨年5月に撮影を敢行。劇中には、高杉演じるドイと岸井演じるエモトが、実際の建設現場のトンネルを見学に行き、ドリルジャンボなどの大型重機がトンネルを掘っていく掘削現場を体験するシーンが登場する。撮影現場は今回の試写会会場のほど近く。賀川さんは「建設中からやってほしいと言っていたんです」と明かしてくれた。工事関係者にとっても、待望の試写会だったという。

 イベントには、地元の小中学生や建設に関わった作業員ら約170人も参加した。180センチのマジンガーZも駆け付け、空気感はどんどん温まっていった。高杉は「劇中の工事中とは違う景色で、不思議な感じです。きょうはこうして台も組み立てていただき、うれしく思います。ヘルメットが懐かしい」と感激した様子で、岸井は「当時は工事中で、ターミネーターやアベンジャーズが出てきそうだねって言っていたのが、こんなにきれいにトンネルになっているなんて」と驚きながら、「普段はトンネルをつくる人たちを実感する機会はないですけど、ドリルアンカーとか、ロックボルトを打ち付けたりとか、実際の姿を見て、私たちは人の仕事で生活できているんだと実感できました」と話していた。

 その言葉通り、多くの人が関わって一つの目標に向かって突き進む情熱を感じた。ステージの隙間にはベニヤ板が見える。手作り感のあるステージにも、映画の公開を待ちわびるような工事関係者らの思いが感じ取れた。

 本作は、新市場を切り開くフロンティア精神、大人になっても忘れない挑戦心を描き出している。イベントでは高杉と岸井が、子供たちへ向けてメッセージ。高杉が「大人になっても、夢を見続けていいということが分かる映画だと思います。子供の頃だけではなく、ずっとロマンを追い続けている人たち、今回の前田建設工業さんも撮影現場でもそうですが、夢を持っている方たちの仕事を見ていると、楽しそうなんです。それが楽しく仕事をすることに必要な条件なのかなと思っています。僕はそういうものを持っている方たちと仕事をできるのはすごく楽しい。あきらめずにずっと前を見て進んでいってほしいし、僕もそんな大人になりたいです」と熱く語った。岸井は「自分の好きなものは絶対に何か生活につながっている。好きなことをあきらめないといけないと思う時が来たとしても、夢中になって探していけば、生活につながる夢が実現できると思う。何かに夢中になれるものは熱心に取り組んでいってほしいと思っています」と呼びかけた。

 イベントでは前田建設工業でファンタジー営業部の在籍経験があるという賀川さんから、2人にプレゼントがあった。建設業界では“縁起もの”とされ、トンネル貫通作業の中で発生する花こう岩の「貫通石」だ。賀川さんは壇上で、「私も7年前にファンタジー営業部にいまして、違うアニメーションの発進基地を、真面目に計画と見積りを作りました。続編で扱っていただき、また祈願してもらえれば」と思いを語った。

 最後はマジンガーZを高杉と岸井が囲んで、ヘルメット姿の全員でフォトセッション。超異例の試写会は、普段の仕事をこなす中で忘れそうになる“面白がり精神”を改めて教えてくれた。

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