カンヌ4冠の濱口竜介監督、母校に凱旋 後輩たちに「自分の目は信用ならない」と説く
濱口竜介監督が7日、自身の母校である東京藝術大学大学院映像研究科 馬車道校舎にて行われたトークイベントに登壇した。濱口監督の最新作「ドライブ・マイ・カー」はカンヌ国際映画祭全4冠を達成。今回の母校凱旋トークイベントでは、学生時代の取り組みや映画製作の裏側などを語った。
濱口竜介監督が映画製作の裏側を語る
濱口竜介監督が7日、自身の母校である東京藝術大学大学院映像研究科 馬車道校舎にて行われたトークイベントに登壇した。濱口監督の最新作「ドライブ・マイ・カー」はカンヌ国際映画祭全4冠を達成。今回の母校凱旋トークイベントでは、学生時代の取り組みや映画製作の裏側などを語った。
同作では50時間以上も回したそうだが、撮影中から編集をすることはないという濱口組。「自分の目というのは信用ならない。初めから最後まで通して撮って、もう1回、まっさらな目で見ると撮影現場ではNGだったものがOKになるものがあったり、OKだったものが面白くなかったりするものもある。だったら1回全部見ようと。あらためてOK、NGを出し直すということをしてから編集に入るようにしています」と濱口監督はその理由を明かしていた。
同作は村上春樹原作短編小説の映画化。愛する妻(霧島れいか)が秘密を残して突然亡くなってしまう家福(西島秀俊)は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と知り合う。人々との出会いを通して再生していく人間ドラマだ。同作は第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて日本映画として初となる脚本賞を受賞し、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も獲得。4冠達成という快挙を成し遂げた。
イベントでは脚本や編集に他者が入ることについての話題があがった。濱口監督は「脚本や編集は複数人入った方がいい。自分が書いているもの、触っているものの評価というのは自分ではできない。フィルターが重なった方がいい」と映画製作の考え方を力説。さらに、「何十時間もの映像を1人で見るのは耐えられないじゃないですか。2人以上で見ることで社会的行為になる。そして、みんながいいというものは使えばいい。すごくシンプル」と言及していた。
母校の学生から「複数台のカメラを回す場合、使うカットの判断はどうしているか」という質問があがると、濱口監督は「複数カメラを使う場面は、基本的には役者の負担を減らしたいという意味合いがあります。僕の作品は何度もやらせることが多いが、減らせる負担は減らしたいんです。結局、どんな演技になるかは分からないし、事後的にしか決められない。いい演技でもNGが出た後にインサートがあれば、テイクに戻すこともできる」と回答。また、「現場でNGっていう言い方はしません。数回撮ったら『別のアングルから撮ってみましょうか』という言い方をします。一つのアングルはそんなに撮っていないと思う」と付け加えた。
当日はほかに同作で編集を務めた山崎梓、東京藝術大学映画専攻の長嶌寛幸教授も登壇。同作は8月20日より、TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開。