東京五輪で脚光浴びる日本のトイレ 課題はジェンダー平等や多機能トイレの機能分散
車いす使用者やLGBTQ(性的少数者)の人々に配慮した社会のバリアフリー化が進む中、公共トイレが社会問題になっている。男性か女性しか選択肢のない入り口、広くより便利になった多機能トイレには利用者が集中。都内ではスペースも限られているこの問題を、大手企業は独自に解決を図ろうと、さまざまな取り組みに挑戦している。ジェンダー平等、多様性の尊重が叫ばれる中、開発された最新のトイレ事情に迫った。
入口に男女の区別がないトイレが登場 多様性の尊重へ
東京五輪・パラリンピックのゴールドパートナーで、選手村に「金の装飾トイレ」を納入したことでも話題の住宅設備LIXILの本社(東京・江東区)。その1F部分のトイレは、入口に男女の区別がない。オルタナティブ・トイレと言われるもので、トランスジェンダーの人などに配慮した作りになっている。内部はさまざまな個室で分けられ、利用者は自分に合った個室を選ぶことができる。性別の区分けがなく、多様な従業員に対応したものだ。
「トランスジェンダーの方がトイレを利用するとき、男性用か女性用か多機能トイレかと迷い、そこにストレスを感じてしまう。特に、オフィストイレの問題は根深いところにある。一つのアイデアとしての提案です」と担当者は説明する。
パブリックトイレと呼ばれる公共トイレの問題もクローズアップされている。近年は、子ども連れなども利用できる多機能トイレの数が増え、利用者が集中。おむつ替えシートやベビーチェアなど子ども連れ家族にとって便利になった反面、混雑のあまり、当初の対象であった車いす使用者など障害を持つ人が使いにくくなっているとの声が増えている。国土交通省もトイレの機能分散による改善を促している。
LIXILではこうした問題に対しても、独自の取り組みを進めている。
「モバイルトイレ」は、車いすの利用者から「イベントに行きたいけど、車いす利用者が使えるトイレがなく外出できない」という声が多いことを受け、トヨタ自動車との共同で開発したものだ。
この移動型バリアフリートイレは、快適・衛生的なバリアフリートイレを車両に搭載し、「多機能トイレを移動させてしまおう」という画期的なもの。8月24日開幕の東京パラリンピックの開閉会式やパラマラソンでも選手用として使われる。
さらに「withCUBE」という個室トイレは自由設計が魅力。物流現場や工場で働く人々のために開発されたもので、一つ一つの個室は広く、従業員数や利用目的に合わせてトイレを組み合わせてパブリックトイレをつくることが可能。用途や対象に応じて、車いす使用者向けや乳幼児連れなどに配慮したトイレを設けることもできる。もちろん、性別によるトイレの分け隔てもない。
東京五輪ではシャワー機能などで海外勢から脚光を浴びる日本のトイレ。ダイバーシティー(多様性)の時代に向かっても急速に進化している。