「ルール違反はやらない。プロだから」―ハリウッドザコシショウが語るコンプライアンス論

「R-1ぐらんぷり2016」優勝から、今年度の「R-1グランプリ2021」では審査員を務めるまでにブレークを果たしたハリウッドザコシショウ。8月には2年ぶり12回目となる単独ライブ開催を予定している。一度見たらとりこになる狂気のネタでファンを増やしているが、一方で「すべては計算の上での笑い」と語る緻密な一面ものぞかせる。“芸人があこがれる芸人”ハリウッドザコシショウに、令和の時代のコンプライアンスについて聞いた。

インタビューに応じたハリウッドザコシショウ【写真:山口比佐夫】
インタビューに応じたハリウッドザコシショウ【写真:山口比佐夫】

「テレビで見れないネタを入れることが、ライブの楽しみ」

「R-1ぐらんぷり2016」優勝から、今年度の「R-1グランプリ2021」では審査員を務めるまでにブレークを果たしたハリウッドザコシショウ。8月には2年ぶり12回目となる単独ライブ開催を予定している。一度見たらとりこになる狂気のネタでファンを増やしているが、一方で「すべては計算の上での笑い」と語る緻密な一面ものぞかせる。“芸人があこがれる芸人”ハリウッドザコシショウに、令和の時代のコンプライアンスについて聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

――2年ぶりとなる単独ライブに向けて、率直な思いは。

「去年(新型コロナウイルス禍で)中止になったんですけど、今はそのときより状況がよくないから、今年開催するのは変な感じがしますけどね。今できるなら去年もできたよなって。もちろん、1年経って対処方法も分かってきてるんでしょうけど……。まだ(収容定員の)50%で、いろいろ本調子じゃないなという感じもある。ライブがやれるのはもちろんうれしいんですけど、正直複雑な気持ちではありますね」

――単独ライブ2日目には初の試みとなる動画配信も予定しています。

「本音を言えば、配信なしでやりたいんですよ。配信だと地上波と変わらないくらいのコンプライアンスがあるから。これはもう仕方ないことなんだけど、コンプライアンスは年々厳しくなってきてる。昔はライブはライブで、テレビとはまた違ったネタができて、それもライブの楽しみの一つだったんだけど、今はライブでも『こいつこんなことやってたよ』とすぐSNSで拡散される時代。もちろん、ライブにもライブのコンプライアンスがあって、何言ってもいいわけではないけど、テレビよりは基準が少しゆるかったりするんですよ」

――熱心なファン向けの閉じられたライブがやりづらい時代になっていると。

「本当に人を攻撃するようなことは言っちゃダメだけど、今はなんだか言葉狩りみたいになってる。一度、僕の個展でグッズを買ってくれた方限定のミニライブをやったときに、今日はガチのファンしかいないからって、ちょっと攻めたことを言ったんですよ。ちょっとした下ネタですよ? そしたら、『お前、そんなこと言っていいのかよ!』と立ち上がって大声でヤジッてきたお客さんがいて、それでもう怖くなっちゃって」

――それでもできる限り攻めたネタをやりたいと思っている。

「攻めたネタがやりたいというより、テレビで見れないネタを入れることでライブの良さが出てくると思ってるんです。放送ギリギリの、たとえば“珍棒”みたいなね。模型ですよ? あそこのでっかい模型を使ったネタがあって、ライブ限定ならギリギリ行けるけど、そういうのって、もうテレビでは無理なんですよ。ちょっと前まではやれてたし、ディレクターさんとかプロデューサーさんへ事前に確認をとっても『いいよいいよ』『やって下さい』とは言われるけど、結局放送には乗らないんです。何回か乗らないと気づきますよ。ああ、もう無理なのかって。でも、ルール違反はやらないですよ。プロだから」

――以前からすべて計算の上での笑いだと公言しています。

「適当にやってると思われがちなんですけど、綿密な打ち合わせをして、計画した上でやってる。視聴者的には『適当に出てきて適当にやってるんでしょ?』と思われてるでしょうけど、こっちもそれ込みでやってますから。適当に見えた方が面白いし、計算して、計算して、計算しまくってあんなアホなことやってるんだとしたら、それも逆に面白いかなって。芸人なんて売れたモン勝ちで、僕は後から売れた芸人だから、どうやったら売れるか、どうやったら埋もれないかをずっと考えてきた。喚きながらドラを鳴らしながら出てくる人って、やっぱりそんなにいないんですよ。お笑い界で手薄だったジャンルをあえてやってるんであって、適当にやってるんでも、ネタがないからやってるんでもないんです」

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