ネット全盛の“今だからこそ”伝統力重視 「ジャンプ」グループが漫画家学校に取り組むワケ

「ジャンプの漫画学校」第2期は9月にスタートする
「ジャンプの漫画学校」第2期は9月にスタートする

第1期生からは連載作家も誕生 若き編集者への“伝承”の意味合いも

 出版社ならではの強み。「週刊少年ジャンプ」副編集長の齊藤優氏は「データと経験値には、一日の長があると思っている」と強調する。“結果重視”の制作スタイルについて、「よくなかったときにもしっかりと作家と一緒に検証する作業をしている。『週刊少年ジャンプ』ならではのやり方だと思う」と自信を込める。

 昨年の第1期は、小中学生からキャリアのある人気作家まで約1000人の応募があり、結果として50人が受講。「志望者全体のレベルが高く、びっくりした」(籾山氏)という。早速結果が出ており、卒業生は目覚ましい活躍を見せている。21年6月現在で、第1期生の掲載実績は、連載デビュー9作品、読切掲載24作品。「週刊少年ジャンプ」で「アオのハコ」を連載中の三浦糀氏は第1期卒業生だ。8月4日にはコミックス第1巻の発売を予定しており、「週刊少年ジャンプ」への投稿から、1年半での連載・単行本発売は異例の早さとのことだ。

 漫画学校で大事にしているのは、「絶対的な正解はない」という考え方だ。1つの漫画論を教え込むのではなく、作家と編集者の多様性を重視する。「これまで編集部が経験してきた数多くの成功例を伝える」(籾山氏)という基本方針だ。齊藤氏は「作家によって最適なやり方は変わるもの。まさに十人十色」と話す。作家の数ほど成功例がある。その作家に合うやり方を、編集者と一緒に考え、落とし込んでいく――。新人作家の可能性を広げるというスタンスだ。

 従来の漫画誌に加えて、新たに漫画学校をきっかけにヒット作家が誕生し、より多くの新人作家が集まり、成功例を増やしていく。目指すのは、好循環の仕組みだ。籾山氏は「漫画界全体が盛り上がってほしい」と、漫画界の未来を見据えた思いを明かす。

 漫画学校のスキームはジャンプグループとしても、若き編集者への“伝承”の意味合いを持つという。齊藤氏は「経験や知見を形にして残すことは、作家だけでなくこれからの編集者にとっても大切なこと。漫画学校の取り組みが編集部としても成長につながると思っている」と話し、今後について「内容をブラッシュアップしながら、継続して発展させたい」としている。

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