名キャッチコピー「疲れたことない」の誕生秘話とは… リング上の瞬発力で生まれる棚橋メソッド
プロレスラー「らしくない」を武器に知名度売り込み
――十字架というのは。
「棚橋という新日本プロレスの元気印というイメージに結び付きました。でも、家に帰ってソファーで、はあと一息つく。そうすると息子がやってきて、『あれ、パパ疲れたの?』と聞いてくる。『いや、疲れていないよ』と条件反射で言ってしまうのです。いつ休めばいいんだみたいな(笑)」
――さらに、プロレスの負のイメージを覆すことに全力を注ぎました。
「リング上での戦いにはスポーツとしての激しい側面がありますし、もちろんチョップなどで痛みは伝わります。しかし、抱かれてしまっている先入観が一番の強敵なのです。『プロレスは血が出るんでしょう』『痛そう』『怖そう』といったイメージがあると、試合会場に行こうという気にはなりませんよね。その先入観をぶっ壊す作業です」
「痛そう」「怖そう」負のイメージをぶっ壊せ!
――先入観を壊すために、個人の名前を広め、積極的にメディアに露出して、来客アップの取り組みにつなげています。
「実際に見に来てもらえれば、会場の雰囲気や、選手への応援、盛り上がり。そういったところを楽しんでもらえるという自信はあります。負のイメージを壊すのに、僕がうってつけだったのです。なぜかと言うと、プロレスラーらしい容姿をしていないから。いちいちプロレスラーと言わないと分かってもらえないので。タクシーに乗ると、『お兄ちゃん、きょうはどこでライブやるの?』って聞かれます。僕は『エアギターはできます』と答えたり。プロレスラーとしてあまり見られないのならば、そこを逆手にとって、じゃあまずは『棚橋弘至』という人間に興味を持ってもらおうと。一度試合を見てもらったらプロレスを好きになってもらえるという自信はあります。試合会場に来てもらうきっかけ作りに注力しました」
(つづく)
□棚橋 弘至(たなはし・ひろし) 1976年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。42歳。立命館大卒業後の1999年に新日本プロレスに入門し、同年デビュー。IWGPヘビー級王座に何度も輝き、第56代IWGPヘビー級王者時代には、当時の歴代最多防衛記録である「V11」を達成。キャッチコピーは「100年に一人の逸材」「エース」。特技はエアギター。2019年6月、「カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの「復活力」」(マガジンハウス)を刊行。
https://magazineworld.jp/books/paper/3055/
(ENCOUNT編集部・吉原知也/Tomoya Yoshihara)