21年間リングコール務めるレニー・ハートさん 代名詞“巻き舌コール”が生まれた理由

「9・11」の後の暗い気持ちが高山VSドン・フライで吹き飛ぶ

 ここで素朴な疑問。なぜ「巻き舌」で選手のコールをするようになったのか?

「実は最初の(東京ドームの)イベントで自分のスタイルを作り始めました。途中で自然と、オーガニックにね(笑)。リング上の素晴らしい選手を見ていたら、特別なことがやりたくなったんです。ただ日本語を英語にしてコールするだけじゃなく、選手のために、お客さんのために、盛り上がりたかった。でも、巻き舌になったきっかけはリコ・ロドリゲス!」

 そう言って、巻き舌を使って「リコ・ロドリゲス」とコールしたレニーさん。話の流れで、それはどの大会からだったのか、との問いには、「PRIDE.10」(01年8月27日、西武ドーム)と回答。レニーさんは「西武ドーム、暑かったね」と苦笑した。

 実際、あの大会は、一度体験すれば十分すぎる灼熱(しゃくねつ)の暑さだった。

「その時、私はドレッシーなイブニングドレスだったんですけど、『もう死にそう……』って思ったし、(汗だくで)メイクも取れちゃうし、大変でした。この仕事、続けることできるかなー? できなーいできなーい。もうヤメたーい!」

 しかしながら、相次ぐ激闘に「選手を見ると、そんなことは忘れた」。猛暑の下、興奮状態のレニーさんは、ロドリゲスを「巻き舌」でコールしていた。

 そんなレニーさん、21年のキャリアの中で、最も印象深い試合は何なのか。

「21年もやっているので、何百試合と見てきたからいろいろありました」と前置きしながら、選んだのは、格闘技ファンの中でも語り草になっている一戦だった。

「なかなか忘れないのは高山善廣VSドン・フライ(02年6月23日、さいたまスーパーアリーナ)。あれは信じられないですね」。レニーさんは「ボンボンボンボン」とお互いがお互いの肩をつかんで至近距離で殴り合った壮絶すぎる一戦を挙げていた。

 特別な理由もあった。「あれは『9・11』(の同時多発テロ)が終わった後の試合。ドンはアメリカ人だし、ずーっと悲しかった(落ち込んでいた)」

 だからこそ、全てを吹き飛ばすような両者の一戦には「ヤッター!」と小躍りし、「その試合を見ていると、2人からヒロイズムを感じたし、自分の問題(暗い気持ち)は全部忘れた。だからあの試合は覚えています」と強烈な印象を残した。

 なお、動画では、「極私的“夢の対決”」と題し、過去にレニーさんがコールしたことがないだろうという人物の名前をコールしてもらう企画が行われ、長州力VS前田日明を巻き舌でリングコール。続編では、アントニオ猪木の“巻き舌コール”も実現するという。

次のページへ (3/3) 【動画】格闘技界での秘話を激白したレニー・ハートさん
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