プロダンスリーグ「Dリーグ」はプロ野球やJリーグに並ぶか 初年度に見えた課題と可能性

審査の難しさが課題の一方で、それゆえに生まれる戦略性も

 もちろん、まだ課題もある。ヒップホップ、ジャズ、ロック、レゲエなど、異なるジャンルのダンスをどうやって公平に審査するのか。著名なダンサーや演出家による審査員投票だけでなく、オーディエンスによる投票を採用するなど、シーズン中も試行錯誤を繰り返してきたが、チャンピオンシップでは4試合中3試合でオーディエンス票を獲得したチームが敗退。プロの審査員の目と一般のオーディエンスの評価とに差が出た格好だ。

 一方、審査の難しさゆえに高度な戦略性があると語ったのは、優勝したロイヤルブラッツの監督役兼ダンサーを務めたチームディレクターのRIEHATAだ。通常ダンスでは数か月間の練習を経て1つの演目を完成させるが、レギュラーシーズンのサイクルは2週間に一度。完成度を犠牲にバラエティー豊かな演出が求められる。チャンピオンシップでは準決勝、決勝と2本の作品の順序も勝敗を分ける要因となる。

 今回の決勝では相手チームの「FULLCAST RAISERZ(レイザーズ)」がストンプという足を踏み鳴らすパフォーマンスであえて音楽を使わない賭けに出たが、審査員からそのチャレンジングな姿勢を評価されつつも、結果的には難易度の高いパフォーマンスが審査に響き敗退した。

 これにRIEHATAは「確かにレイザーズは挑戦してきた。最後の最後であえて勝てるものを選ばず、ダンスの可能性を見せた」とその姿勢を認めつつ「逆に言うと、その挑戦を12ラウンドまでやってきたのが私たち。ダンスってジャッジできない。ジャンルも違う。どうやったら勝てるか。どうやったらやってきたことが一般の人にも伝わるかということをこの1年間ずっと考えてきた。ヒップホップだけだとファンが偏ってくる。あえてジャズを取り入れたり、そういう戦い方をやってきたからこそ、最後に一番得意なパフォーマンスができた」とこの1年間の構成の意図を明かす。

 明確な評価基準がない以上、審査結果に納得のいかないファンも生まれるが、それはM-1グランプリなどのお笑い賞レースも同じ。オーディエンス票により今後はファンによる組織票の懸念もあるが、これについては神田勘太朗COO(最高執行責任者)が総括で語った「組織票、いいじゃないですか。ファンを獲得する。それこそがショービジネスだと思ってる」との言葉が頼もしい。プロスポーツの身体能力、勝敗があるからこそ生まれる感動、高い戦略性、ファッションやカルチャーを伴ったショービジネスとしての適性。来季も多様な楽しみ方を秘めたDリーグの可能性に期待したい。

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